51 ギルマス②
「粥を売れるのか?何人分作られる?」
「鍋があるかどうか次第ですが、1度に100人か200人か…200人分は多すぎですよね?」
「いや、売れると思う。どんな粥か見てみたいのだが…」
「そうですか、そうですよね。それなら今夜木の葉亭にお越しください。宿泊者に小銀貨2枚で振舞っているので、ご用意しておきます。」
「わかった。何時ごろがいい?」
「そうですね…日暮れごろで」
隆二は、ヒイロと約束をすると解放された。
そのままの足で、ヒイロに教わった商店街へ向かう。
鉄鍋や木製のお玉など、様々なものが売られていた。
鉄鍋は大小様々あったが、いい値段がつけられていた。40Lの大鍋は大銀貨1枚だ。手造りと思えばそのような値なのだろう。
いくつかの店を回っていると、20Lの鍋がいくつも並んでいた。さび付いているものもあるが、黒々と照りのあるものもあった。どうやら中古品らしい。
「兄ちゃん、それいいだろう?物もしっかりしている上物だ。」
「ああ、そのようだな…これ2つとか3つ買ったら安くできるのか?」
「へ?いくつも買うのか?」
「値段次第だね。」
「そうかい、こっちの大鍋は興味ないか?あと中間のこんなサイズもある。」
店主が出してきたのは、寸胴鍋だった。深さがあるので、焦げ付かずに料理するのが大変そうではある。なべ底にゆがみはなく平らならばいいか?
30Lの寸胴は、使っていないようできれいなままだった。新品に見える。
「なんでこんな形に?」
「やっぱりそう思うよな。重ならないし、深くて使いにくいと言われて売れ残っているんだ。」
「そうなのか…。」
それは使い道次第だろう。スープ類を作るには保温もできて悪くないはずだ。
「このタイプだったら、5つ大銀貨3枚でいい。」
「それなら大鍋を一つ買うほうがいいよ。」
そんな事を思っていないが、交渉の初手として言ってみる。
「だよなぁ…大鍋とこの鍋5つつけて大銀貨3枚でどうだ?」
「なんだ?よほどこの鍋が邪魔なのか?」
「邪魔というか、これいい金属を使ってはいるんだ。それで絶対に売れると言って仕入れた手前、いつまでもあると煩いのがいてよ。」
「そういうことか。」
店主が苦笑いをしていた。
「そうだな…そんなに買っても運べないよ。」
「そうなのか、それならボロっちいが荷車をつけるよ。だから買ってくれ。」
示された荷車は、前輪が壊れたらしく後輪しか残っていない。だが、前を持ち上げれば動きそうだ。
「ロープもつけてくれるなら、買ってもいい。」
「おぉ!?まじで?助かるよ。ロープはつける。積み込みもするから待っていてくれ。」
店主は、張り切って鍋を6つ積み込んでくれた。
鍋は1つあればいいのだが、商売をするなら同じ大きさの鍋があると便利だ。『箱』の1枠に入れることができるので、作り置きができる。売れきれなくても心配はいらなくなる。
それに、入れ物はあって困ることもないだろう。
「店主、小さな鍋はないか?」
「小さい鍋?そんなものどうするんだ?」
どうすると聞きつつ顎に指先を当てたので考えているのだろう。
「あっ…あるぞ、ちょっと待ってくれ」
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