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5 りんごの木

 「ここにいても仕方ないか…」


 時間が結構経ったように思うが、太陽の明るさが変わらない。慣れない場所に来て緊張しているにもかかわらず、体が重くなってきた。


 「だめだ。一回しっかり眠った方がよさそうだ。」 


 隆二は、荷台へ移ると汚れも気にせずに荷物を安定させるために積んでいる毛布を頭から被って眠りについた。



 目覚めて状況把握に数分かかった。

 そうだ、どこかに飛ばされたようなのだ。

 かなり寝ていたはずなのに、店からも客からもクレームが届いていない。間違いなく、連絡の取れない場所なのだろう。


 評価を見ると、MPは4550/5000で昨日と変わらない。

 隆二は、アイテムボックスから弁当の入ったコンテナと飲料の入ったコンテナを取り出した。その中から親子丼、緑茶、コーヒーを取り出してコンテナを戻した。

 

 レンジスキルで親子丼を温め、MPは4400/5000になった。

 隆二は、お茶を飲みながら親子丼を食べ始めた。



 MPはどんどん減っている。

 増やす条件がわからないと減る一方だ。弁当は無理だが、ペットボトルの入っているコンテナは常温でも腐らないのだから出したままでいいのか…。


 車を走らせて、充電がなくなっても走るのかどうかはわからない。だからと言って、この何もないところに居続けても仕方がない。行動しないと、解決策は見出せそうもない気がしていた。


 隆二は、車に乗るとスマホのマップを開いてみる。相変わらずの世界地図で約に立たない。エンジンをかけると真っすぐ前へと走らせた。




 どこまでも草原が続いている気がしたが、そのうち正面に丘が見えてきた。丘には一本の木が生えていて、その後ろには針葉樹の山が見える。

 

 「よし、あの丘へ上がってあの木の麓から下を見下ろしてみよう。きっと遠くも見えるはずだ。」

 

 ずっと続いていた平坦な道が途切れ丘を上り始めた。案外容易に上り切り、予定通りに木の根元へと車を止めた。

 大きな木だと遠目でも思っていたが、近くで見ると一段と大きい。昔懐かしいCM特集で見るような大きな木だ。



 隆二は、評価を開きMPを確認する。4400/5000で変化なしだった。車を動かすことにMPは消費しないようだ。貴重なMPを使わないのは行幸だが、そうなると充電の残りが心配になる。

 運転席でハンドル奥のモニターボタンを操作していると、残りの電池量が表示された。

フル充電になっている!?

 そういえば、スマホもフル充電のままだ。どうやらフル充電維持は神様?からのギフトなのかもしれない。



 安心したところで、木に視線を向けた。

木には丸いものが見えた。どうやら実らしきものがついているようだ。木を一周して枝が下がっているところを見つけた。

 実が鈴なりになっていて重くて下がったようだ。隆二は、枝先を捕まえて1個を採った。


 りんごのような見た目で、大きさは大きめだ。

 服で表面をこすり、噛り付いてみる。甘酸っぱい果汁が溢れてくる。あまりの美味しさに3つ続けて食べてしまった。

 

 「うまかった…持っていこう。」

 

 隆二は、車へ戻るとリュックサックの中身をすべて取り出した。

 前抱きに紐を肩へかけた。もう一度、下がっていた枝は少し上がっていて届かない。


 「よっと」


 隆二はジャンプをして枝を掴み、枝を下げると実をもぎ取ってはリュックサックへと入れていった。


 「もういいか?重い…」


 隆二は、車へ戻りりんごを荷台へと並べた。弁当を取り出すときにこれもしまおう。その後、何度か下がっている枝を探したものの手の届くものはなかった。


 「いやいや、目的はりんごじゃない。」


 隆二は気を取り直して、丘から下を見回した。山の右手側に土色の荒野と草原、木の生えた場所がパッチワークのように混然としていた。木の生えた林らしきところが4割、草原が1割、残りは荒野ってところか…。

 目を凝らしてみると、ところどころに村か町のようなものが見えた。



 マップを開いても相変わらず、世界地図のままだ。

 だが、これで向かう方向ははっきりしたので隆二はほっとしていた。


 よかった…ここから抜け出せないわけではなさそうだ。

 距離がありそうだから、どのくらいかかるかわからないけどそれでもあの村や町へ行こうと決めた。

 そうとなると、手持ちの食糧だけでは心許ない。

 売るものも必要なのだからと、もう一度りんご狩りを始めた。

 リュックサックに数回分のりんごを回収して満足する。


 腹が減ってきたので、一度片づけることにした。空コンテナとアイスボックス2個を取り出し、りんごを入れた。アイスボックスは草花が入っていたので、それを二つに分けてクッション替わりにりんごを入れた。コンテナとアイスボックス2つで収まったので、箱へと収納した。

 

 改めて弁当と飲料のコンテナを取り出した。飲料のコンテナは出しっぱなしにできるよう荷台の隅に置き、弁当はひとつ取り出してコンテナを箱へと戻した。


 温めた弁当を食べ、飲み物を飲んで一休みする。ペットボトルの空き容器6つと空の水筒がある。

 飲料のコンテナは1/3が空いてしまった。早めに水の補給をしておきたい。



 隆二は、もう一度、丘の上から見下ろしていた。よくよく見ると、森を少し入ったところに水場があるようだ。泉なのか池なのかわからないが、行ってみる価値はあるだろう。

 隆二は再び車へ乗り込んだ。


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