47 商売をしよう①
ロールパンとお茶のセットで2000ダル
翌朝、隆二は昨夜考えたことをもう一度考えてみる。
この値付けは高いかもしれない、売れないかもしれない。
いや…それよりも、せめて茶に使う湯くらいは用意したほうがいいのではないか?
冷静に考えると厳しいかもしれないと不安になってくる。
でも…ロティのあの米が少ししか入っていないスープで1000ダルだ。そう考えるとパンとお茶で2000ダルは高くない。なんなら3000ダルでも…いや、さすがにそれはない。高すぎると自分で打ち消した。
だが、考えても仕方がない。
やってみてだめなら半額にまで下げてもいいだろう。
隆二は、袋から出したパン7P分をと紅茶のティーバックを籠に盛り、ハンカチをかけた。ティッシュケースも籠に取り付けてからそれをインベントリへ収納した。籠に入れていない残りのパンとティーバックもリュックサックから取り出すふりをするつもりだ。
シミュレーションは万全だ。後は売ってみるしかない。
「よし!最初の一歩だ。失敗したら考え直せばいい。」
隆二はそう自分に言い聞かせると両頬を手でパンっと叩いた。
気合を入れて商業ギルドへ向かった。
商業ギルドのカウンターにはすでに行列ができていた。今日はリリアさんの列にも並んでいる人がいるくらいに混んでいた。
30分ほどかかってやっと順番が来た。
「リュウジさんおはようございます。」
「リリアさん、おはようございます。」
「登録してから初めてですね。登録証を出してください。」
隆二は、首から下げた登録証を服の中から取り出して見せた。
「はい、確認しました。今日はどうなさいますか?」
「籠売りをしようかと思っています。」
「籠売りですか?商品はどんなものを?見せていただいてもよろしいですか?」
「わかりました。今出しますね。」
隆二はリュックサックを下ろして、カウンターへと置いた。袋の口ギリギリの籠を取り出すと、周囲が静まりかえったが、隆二は気が付かない。
「リュウジさんそれは?」
「見ての通り、パンとお茶です。お茶を淹れて売るのはスペース的に無理なので、ティーバックのまま売ろうかと…」
そう言いながらリリアを見ると、目を見開いて固まっていた。
「リリアさん?」
「あっあのっ…それをかごっ…籠売り…ですか?」
「はい、籠売りしてこようかと…」
「ちょっと、ちょっと待っていてください!」