42 水浴びと洗濯
隆二は、ロティの屋台販売を見学してから水浴び場に向かう。
女将に教えてもらった水浴び場や洗濯場というのは、川だった。
川の脇に石を積み上げて流れを緩やかにしているようだ。
毎日着替えていたので、この町に来てからため込んでいた服も洗濯する。柔軟剤は使わずに液体石鹸のみをアイテムリストで交換していた。大き目の桶に洗剤液を作り、水を入れて浸け置いてから足で踏んだ。
手で洗う物なのかもしれないが、子供の頃に洗濯機が壊れてしまい母と二人で風呂に入れて足で踏んだのを思い出したのだ。
毎日着替えていても、舗装されていない道を歩いているせいか結構汚れていた。
濯ぎまでして服を手で絞る。棒を用意してそれに巻き付けて絞ると少しは楽に絞れた。脱水機くらいは作りたいと思う。
洗った服はインベントリへと収納した。
それから、ボディソープで体もゴシゴシと擦り、リンスインシャンプーで頭も洗った。久しぶりにすっきりとして気分がいい。
川に入り洗い流していると、女性たちが団体でやってきた。
隆二は慌てて水から上がると別の服に着替え、隆二は宿へと帰った。
部屋に戻ると、ベランダにある棒を拭いて、服を通してかけた。洗濯ばさみがないので、止めることができないのだ。全部を干すには、少々詰め込みぎみになるので、部屋の服掛けも窓際へ運んで使った。
乾くにはしばらくかかるだろう。
隆二は、ベッドに転がりアイテムリストを眺めていた。
布団やクッションの類が欲しいが、コンビニのアイテムにあるはずもない。
眺めている内に、栽培セットを見つけた。
小さなポットやペットボトルで育てるらしい。興味を持ってみていると、米の栽培セット付の子供向け雑誌を見つけた。
確かこのシリーズは、お孫さんと同居していた小林さんが買っていたものだ。
説明を読むとプラスチックバケツで種籾20個が付いているセットらしい。栽培セットなので土と肥料もついているという。
しばらくこの宿にいるだろうし、移動するならインベントリへ入れればいいだろう。暇つぶしにはなるし、いつか畑をしてみたい。
この町の様子からは、農業はうまくいっていないようだし、畜産はしていないらしい。もし農地に余りがあるなら手に入れてみたいし、よそ者には無理なら人のいない土地を開拓するのもいいのかもしれない。
農作業の道具は屋台では売っていなかったが、どこかで売っているだろうから探すのもいいだろう。
夢が広がりすぎた。
まずは、この水稲の栽培セットとベビーリーフセット、蕪なんか簡単でいいのでは?
それらを1つずつ交換した。
目の前にはバケツと手のひらサイズの鉢と種のセットが並んだ。
さてと…説明書を読んで、土に水を含ませ栽培できる状態へと戻した。説明書をよく読み米籾は水へ浸けて一晩置く。
ベビーリーフと蕪は戻した土を入れた鉢へ種を蒔いた。
ベビーリーフは適当にパラパラと半分ほど、蕪は10粒の種の内3粒を蒔いた。
ベランダの壁側へと並べておく。米は翌朝に種蒔をすることにした。
ベビーリーフが育ったらサラダにできるし、蕪ならスープにしても漬物でもいい。コンビニ弁当は悪くないが、味が濃いし3週間は食べ続けているので飽きつつあった。
そろそろ調理して食べたいところだ。
昨日食べたボア肉はあまり好みではなかった。
鍋とかお玉とかフライパンとか調理道具を探して買ってくるか…。
金属はかなり高そうだが致し方ない。
アイテムリストにカセットコンロやガスボンベはあるが、鍋がなければ使いようがない。いやバナの葉の器を使うという手はあるが、室内で万が一火事を出したらと思うと、道具を使って安全にと思うのだ。