40 ボア肉
ロティが慌てて女将さんたちを見た。
彼女たちは味わっているだけで気にしていない。
「胡椒って…リュウジさんらしいけど…部屋に行きましょうか」
「おお、そうだな。そっちの肉も冷えたら堅そうだし」
「あとは皆さんでどうぞ、俺たちは部屋へ戻ります。」
「いいのかい!?」
「ええ、どうぞ」
ロティに引っ張られるように部屋へと戻った。
「リュウジさん、胡椒は高級品だ。そんな無闇に振舞ったら危険だよ。」
「そうなの?安物の胡椒だよ?」
「胡椒に安物なんてないから…」
ロティは、疲れたようにしゃがみこんだ。
「まぁまぁ…ボア肉食べるだろ?いらんなら全部食うぞ」
「食べる!」
「ならこっちに座れ」
ロティは、諦めた顔で椅子に座った。
長く一緒にいるからか、隆二の言葉使いは崩れつつあった。
「多分な、これも合うと思うんだ…」
隆二は醤油を取り出して、数滴かけた。
「この黒いのは?」
「醤油っていう調味料だ。大豆から作っていてうまいぞ。」
「へぇ…」
ロティは、フォークを取り出して一切れ食べた。隆二は竹箸を取り出して食べる。
やはり醤油が入ると臭みも消えて食べやすい。これは、ご飯が合うかな?それともパンかな? ごはんがいいな…リュウジはリュックサックを開く振りをしてパックご飯を取り出した。そしてそっと電子レンジスキルで温める。
「ロティ、これは米を炊いたものだ。粥の水を少なくするとこうなる。肉と食べると旨いぞ。」
隆二は、パックご飯の1/3をロティの皿へ乗せた。
「ごはん?」
ロティはごはんを食べて、肉を食べてごはんを食べた。
「うん、美味しい。おかゆと違ってつぶつぶしていてもちもちしている。」
「だろ?」
「肉と合う。これ幸せな組み合わせだ。」
ロティが蕩けた顔でそんな事を言うので、隆二もつい頬が緩んでしまった。