39 屋台広場
隆二は、ロティと連れ立って商業ギルドから歩いて5分ほどの屋台広場へと向かった。
屋台では、竹や木を使った小物や食器を売っていた。古着も売っていたが、ボロボロで薄汚れていてとても触ろうとさえ思えなかった。
食べ物は数か所で売っていたが、山で採れたというきのこでエリンギのようなものが1本小銀貨5枚とか銀貨1枚とかだった。松茸のような珍味なのだろうか?
バナの葉が1枚で銅貨5枚、藁が手でつかめそうな一束で銅貨8枚の値がついていた。銅貨は100ダルだったので50円程度?という事だろう。
一桁違うのだが、隆二は完全に誤解していた。それほどに物価が高い。
見て回っているうちに、大きな声が聞こえてきた。
それと共に人が同じ方向へ流れていく。
「ボア肉だよ!1枚小銀貨5枚だ!買った買った!!」
見ると、ベーコンの角切り程度の切り身が売られていた。5cm×5cmの厚みが5㎜くらいだ。ピンク色の肉は上等そうだが、あれ一つで5000ダルとは結構な高級肉だ。
どんなに美味いのか興味が沸く。
「ロティあれ美味いのか?」
「うん、美味しいけど…」
「そうなのか?美味いなら食べてみたい。ちょっと買ってくる。」
隆二は、人混みをかき分けて肉を買いに向かう。その間にバナの葉の器を取り出すのも忘れない。
3切れ手に入れ、隆二はご機嫌だった。
インベントリに入れて解説を確認した。問題なさそうなので木の葉亭で焼いてもらおうと考えていた。
「女将さん、頼みがあるんだが」
「リュウジさんかい、なんだい?」
「これ、焼いてもらえないか?」
「なっ!これボア肉じゃないかどこで手に入れたんだい?」
「屋台に出ていた。」
「ちょっと私も買いに行ってくるよ。帰ってきたら焼いてやるから待っておいで。」
女将さんが、すごい勢いで出ていくのを隆二とロティはあっけに取られて見送った。
女将さんは、粥を火にかけていたので、ほどほどのところで火から下して蓋をしておく。それでも帰ってこないようなので、残り火を借りて隆二は肉を焼き始めた。肉には竹串を通して塩コショウをしただけだった。
しばらくして女将さんは肉を抱えて戻ってきた。
「随分いい匂いだね」
「女将さんおかえり、粥は炊けていたから火から下したよ。」
「ああ、悪いね。すっかり忘れていたよ。」
「肉はそんなに貴重なのかい?」
「当たり前だろう?猟でしか手に入らないし、そう簡単に仕留められるものではないからね。出た時に行かないと手に入れられない。」
「そうなのか」
「ああ、それに…粥だってそうさ。穀物だって簡単には手に入らないからロティさんが融通してくれて助かったよ。隆二さんも焦げる前に火から下してくれて感謝だ。」
「それは、まあ。残り火で肉を焼いたのは許してくれる?」
「もちろんさ。それにしてもいい香りだね。」
「味見してみようか?」
3切れ焼いた内の一切れを小さく切った。
他の2切れは適当な大きさで自分の皿に盛りつけた。
ロティと女将さん、それに手伝いの女性も一緒に小さく切った肉を一切れずつ食べてみた。
結構固い。味は悪くないが、なかなか嚙み切れない。臭みもあるようで、塩コショウしていなければ食べられなかったかもしれない。そう思ったが、食べているうちに美味い気もしてきた。次に見かけた時には、よくたたくか隠し包丁を入れたほうがよさそうだ。
「なんだいこれ、美味しいねぇ…それにこの香り…」
「あの…リュウジさん、これ…味付けに何を使ったの?」
「ん?塩コショウしかしていないぞ?」
ロティは、目を見開いた。