35 コンビニ飯
隆二は、久しぶりの室内を満喫していた。
部屋といっても宿の部屋であり、ベッドマットすらない部屋だ。
先ほど、ほんの短時間で銀貨39枚も稼いだので、しばらく宿に泊まれる。そうなると、若干気が抜けてしまうのも仕方がないだろう。
ロティの部屋だったから、隆二への影響も少ない。これはとてもありがたいことだった。
「トントントン」
「はい」
ドアを開けると、少女が立っていた。
「お湯をお持ちしました。追加が必要なら銅貨2枚になります。」
差し出された竹の盥には半分ほどの湯が入っていた。
「いや、十分だよ。ありがとう。」
「では、使い終えた湯は廊下に出しておいてください。」
盥を受け取ると、少女はペコリと頭を下げて戻っていった。
隆二は、すぐに受け取った湯で体を拭いた。
最後に頭を桶に突っ込んで洗う。ただの湯洗いでもしないよりはいいだろう。
タオルで髪を拭き、水を抑える。
ロティが購入した薬缶のお湯を入れた水筒と竹カップを取り出した。
竹カップはロティがくれたもので、穂先を回収してから二人でお茶を飲んだのだ。
この世界では、使い捨て容器などはないので、食器は持ち歩くものらしい。屋台で食べ物を売っていたら自分の器で受け取るのだと教わった。
「そんな機会も今はほとんどないけどね」とロティが笑ったのは仕方がないことだろう。
ロティと合っていなければ、そういった当たり前を知らずに屋台で困り果てるところだった。
隆二は、アイテムリストを開き牛丼と温泉卵を選んだ。酒を飲みたいが、初めての場所なので警戒はした方がいいだろう。
竹カップがあるので、それにお茶も入れられる。冷たいペットボトルの茶もいいが、暖かい茶を飲めるのはホッとする。
「いただきます」
隆二は一人の部屋で、手を合わせた。
電子レンジスキルで牛丼を温めてから容器の蓋を開けた。
竹箸を使うのも久しぶりだった。ロティと一緒にいる間は、パンなどシンプルな物を食べていたのだ。
旨いなぁ…牛丼に温泉卵を乗せ、温泉卵の黄身を割らないように七味をかけて半分ほどを食べてから、黄身を割ってもう半分を食べる。1つで2度美味い。
「はぁ~やっぱり温かいお茶も美味い。建物の中っていうのは、やっぱり落ち着く。」
牛丼を満喫してから、温かいお茶でほっこりとする。
毛布を取り出して、ベッドに敷くと転がってからもう一枚を掛けた。板張りのベッドは固いが思ったよりは寝心地がいい。車の荷台も硬かったので変な馴れもあるのかもしれない。
残りのMPを気にしながら、アイテムリストを開いた。
今朝は寝起きに米とパンに交換していたのだが、時間経過で結構戻っていた。
牛丼を食べたのに3000MPほどあったので、米といくつかのパンに交換して残り200まで使った。