3 電子レンジ
隆二のスキルは、スマホが2つとコンビニ宅配(車)と電子レンジだ。
車は目の前にリアルにあるし、助かるけど燃料は何かが問題だ。この車は、電気自動車だが充電分がなくなったらどうなるのかわからない。充電施設があるくらい文明が進んでいることを祈るしかできない。
宅配って何だろうな?車とスマホのことだろうか?
宅配する物は後ろに積んでいるけれど…そういういや配達先はないのか…。届け先がない以上、ここにあるのは俺の貴重な食糧にしてもいいだろうか?
「食っていいよな?届け先がないのだから仕方ない。時間は過ぎていないけど…うん、現状届けられない。」
自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
隆二は後部ドアを開けて、コンテナを全て下して荷を広げた。
弁当やペットボトル、日持ちする物しない物などに仕分けると、次に冷凍食品の入ったアイスボックスも仕訳けた。途中、アイスチョコバーを食べる。ドライアイスは入っているが、早めに食べたほうがいいのなら食べたい時に食べようと思ったのだ。
コンテナ5つ分を仕分けると4つに収まった。不要になったコンテナは畳んでおく。
1つ目は、各種弁当12個とパック入りレトルト食材が5個、牛乳900ml2本、卵10個パック2つで日持ちのしない物だ。
2つ目は、クッキーやチョコレート、スナック類、ツマミ用らしきチーズ鱈とビーフジャーキー、チーズ入り魚肉ソーセージなどの乾物類だ。
3つ目は、ペットボトルと缶入りの飲料類と、入っていたビニール袋を畳んだ物だ。
4つ目は、Tシャツ、タンクトップ、洗濯洗剤液体などの日用品だ。
次に、アイスボックスを仕分けた。
アイスボックス6つは、結果的に4つの箱に収まった。
1つ目は、アイス系と冷凍保存の菓子だ。
2つ目は、冷凍総菜類でうどんやラーメンまであった。
3つ目と4つ目は冷凍弁当4種類がそれぞれ8個ずつ入っていた。
アイスボックスには、ドライアイスが多めに入っているのを倍にしたようなものなのでそれなりに持つだろうが…早めに食べなければいけないことには変わりない。
発泡スチロールタイプ4つに優先して入れたので、空になった臨時使用用のアルミバックは畳む。
ホットスナックのから揚げ棒はしまわずにいたので、隆二はかじりついた。
仕訳けたばかりの牛乳パックを取り出して、パックから直飲みした。高校生以来の行動だが、仕方がない。容器がないのだ。
コンテナの弁当類にもドライアイスの欠片を入れておく。少しでも冷やしておけば持つだろう。3月の下旬はまだまだ涼しいし、ドライアイスの減りも遅いはず。
それでも早めに食べなければならないことは変わらない。一食に弁当2個で1日6つが限界だろう。いくら弁当が最近小さくなったとはいえ3個は食べられそうもない。
隆二は、コンテナとアイスボックスを取り出し順で運転席側の後ろをできるだけ開けて後部ドアギリギリになるように乗せていく。温度を保てるように、荷物保護のために乗せていた毛布を3枚全部かけておく。
運転席に戻り、席を倒した。
少し仮眠して頭をすっきりとさせてから次の手を考えたほうがよさそうだ。疲れている状態で考えてもいい方法なんて浮かばない。
仮眠後、やはり何も変わっていない。
マイスマホを開いて、カメラで周囲の野原を写した。普通に写真を撮っただけだった。写真フォルダーにもただ写真が収まっていた。
写真に撮ったら、鑑定されるかもなんてほんの少し期待していたが、そんな能力はなかった。チート代表なのに使えないのは残念だ。
スキルが電子レンジって…隆二は、荷台のコンテナから弁当を取り出した。焼き鮭弁当を手にスキルの使い方を考えた。考えても思いつかないので、つい口から出た。
「電子レンジ」
『対象を指定してください』
頭に声が響き、目の前の景色にベールがかかった。
「目の前の焼き鮭弁当」
『ジー…チン!』
聞き慣れた音がして、弁当が温まっていた。
せっかく温めた弁当を食べてから、『評価』を開いた。
MPが4950/5000になっていた。電子レンジ1回で50MPなのか?それとも大きさ、時間で変わるのかは分からない。今わかるのは50MP消費した事実だけだ。
メモを取っておこう。
マイスマホのメモに書き込んだが、それでは不安になりリュックサックからノートとペンを取り出し、消費MPのメモを取った。
食べ物を温められるのは助かる。火を熾さなくても温かい物を気軽に食べられるのはありがたい。ありがたいけど…それだけだ。漫画のように強い勇者にはなれないのだけは理解していた。