29 新しい町①
「リュウジさん、あれがスターティアです。」
ロティの声に顔を上げると、石で囲まれた塀が見えてきた。門は大きな木で作られていて、前には甲冑を来た兵士が立っていた。
隆二は、緊張するのを自覚した。
あの村でのことが頭をよぎるが、今回はロティもいてくれる。1人じゃないし、宿も案内してくれると言っていた。大丈夫だ。不安になるよりも、これからを探らないとならない。
隆二は、揺れるロバ車の上で歯を食いしばったまま深呼吸を試みた。
なかなか難しいけれど、いくらか落ち着く。顔を上げて、町の塀を見た。
前回の村と違ってまともな町に見える。
石を加工する技術も積み上げる技術もある。
隆二は、リュックサックの中身を思い浮かべ大丈夫そうだと思った。
ロバ車はゆっくりと進み、さらに30分ほどかけて門の前へとたどり着いた。
「こんにちは!」
「おぅ!ロティ久しぶりだな。元気そうだ。商売は上手くいっているのか?」
「うん、そこそこね。今回は手ぶらに近い戻りだけど…」
「この人は?」
「商人のリュウジさんです。」
隆二は、話題が自分になっているので頭を下げた。
「隆二といいます。こちらには初めて来ました。」
「初めての場合、持ち物検査など行わせてもらう。」
「わかりました。」
「一旦、車から降りてくれ。」
ロティの肩を叩いて、隆二はロバ車から降りた。
「入町料1000ダルだ。ロティは入っていて構わない。」
「わかった。リュウジさんは木の葉亭に連れていくから、向こう側で待っているよ。」
「ロティさん、すいません。お願いします。」
隆二は、ロティと約束をして兵士についていく。
兵士は門を入ってすぐのドアを開けた。
「ここに入れ。」
中は、石壁に囲われた小部屋だった。小さな窓があり、木製のテーブルセットのようなものが置かれていた。
奥へ進むと、兵士が4人小部屋に入った。
1人は入口に立ち、2人は角に立った。もう一人がテーブルの横に立っていた。
「そのカバンの中身をテーブルの上に並べるように。」
「わかりました。」
隆二は、売るために用意した品を一通り並べていく。
兵士たちは並べた品を凝視していた。
「見慣れない物ばかりだ。説明してくれ。」
「はい、こちらの瓶がワインでこちらがジンです。どちらもお酒です。」
「酒!?本物か?」
「ワインはわかるが、ジンとはなんだ?」
「ジンは蒸留酒です。」
「じょうりゅう…しゅ?まあいい、酒なんだな?」
「はい、かなり強い酒になります。」
「なるほど」
「こちらの箱は、このようになっていて中に袋が入っています。」
隆二は、ティーバックを見せるために紅茶をひと箱開封した。
「中には袋に入ったお茶が入っていまして、気軽にお茶が飲めます。開けてしまいましたので、お湯があるなら召し上がっていただいても」
「いいのか?」
「はい、どうぞ。品が問題ない物だと分かっていただけるはずです。」
兵士は部屋の角に立っている兵士と頷きあうと一人が部屋を出て行った。