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25 ロティ①


 ロティは、朦朧としながら冷たくて甘いものを飲み夢心地になっていた。

 ふと、身の回りに現実味を覚え起き上がると、ロバ車は岩陰にあり大事な相棒であるロバは荷車から外されチェーンだけで繋がっていた。

 荷台の横には、桶が置かれていてたっぷりの水が入れられている。

 

 「え!?」


 周囲を見回すと、しっかりとした枝が地面に刺さり上で組まれていた。組んだ上に見慣れない素材の布がかけられ光を遮っている。

 春を迎えているとはいえ、風は冷たい。天井があり2面に壁があることでかなり過ごしやすい環境が作られていた。

 水が尽きて2日は過ごしたはずだ。

 食べ物もなく、ロバに与える飼い葉もなく、朦朧としてきてもうだめだと思って倒れた気がしていた。

起き上がることは出来たものの、荷台から降りようとすると眩暈がして無理だった。なんとか荷台の端まで移動して身を乗り出して外を覗いた。

 隣には、天井と同じ素材でできている小屋らしきものがあり思い切って声をかけてみた。


 

 「あの…すいません…」

 「ああ、ちょっと待っていて」



 呼びかけに答えてくれたのは大人の男の声だった。

待っているとやってきたのは、背が高い大男だ。

 見たことのない素材と大きさの器を取り出し、その中には真っ白いものが入っている。それを目の前に置いて食べていいというので、恐る恐る口へと運んだ。

 

 やわらかいとろりとした粥でほんのりと塩の味がしていた。麦がゆというものは、プチプチとした食感が残るものだけど、これはどうやって煮たのかな?

 久しぶりの食べ物にがっついてしまうが、夢の中でもこれを食べたのを思い出した。



 「落ち着いたなら、これも飲むといい。」



 目の前に置かれたのは、見たことのない向こうが透けるほど透明な瓶だった。透明なのはガラスかな?ガラスといってもこれほど気泡もなく薄く作れるのか?

 行商を始めて1年経つが、これほどの品は見たことがなかった。

 男は、安心させるためなのか同じものの蓋を捩じって開けて、直接口をつけて飲み始めた。

 

 瓶の直のみ!?


 これはもしや水筒なのか?

 それなら、おかしくはないけど…こんなに薄い水筒では持ち歩きに向いていないのでは?


 「水分足りていないと思うから、飲んで」


 男が、目の前の物の栓を開けて差し出してくれたので、恐る恐る受け取った。ガラスのように見えたそれは柔らかく手に持った途端に少しつぶしてしまう。貴重な水がこぼれたので、慌ててロティは口をつけた。

 水なんていつぶりだろ?それもこれほどに透き通った水なんて…ロティはごくごくと飲み干した。

 一気に飲み干してしまって後悔した。

 こんなに全部を飲み干してしまったら、後で困るのに…。

 いやこれはこの男のものだし、持っていかれたら終わりだからやはり飲み干してよかったのだ。そう自分に言い聞かせていると、男は大きな入れ物を持ってきて、その水を空になった水筒へ入れてくれた。




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