24 時間の概念②
「なるほど。それなら1日は?」
「1日ですか?日が暮れて暗闇になりますので、闇が明けたら日が変わります。」
「切り替えは朝?」
「?」
「いや、いい。ありがとう。」
ロティの反応から寝て起きたら翌日という認識のようだ。
一緒にいる間に基本的な常識とやらを聞いておかないと大変そうだ。基本的知識が足りなすぎる。隆二は頭を抱えたくなっていた。
「リュウジさん、どこから来たのかは聞きませんが…」
「おっ?おう……どうした?」
「この国は帝国です。帝王陛下があられ、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と続き、一代貴族の騎士爵と平民がいます。」
ロティの前置きは、俺がこの国の人間ではないと言っている?「聞かない」と先に言うのなら、詮索はしないと言ってくれているのだろう。
貴族制度か、現在もないわけではないだろうが、正直自分の生活には全く関わりのないことだった。
江戸時代のように殿様が通るときは道の端によって土下座しろとか無礼討ちのようなものがあるのだろうか?
「わかった。どんなことが犯罪でどんな贖罪を求められる?」
「どんな犯罪…たとえば人を殺した場合、騙して人の家を取り潰させるようなことをした場合は、犯罪奴隷として終身奴隷に落ちます。」
「犯罪奴隷?」
「はい、主に重労働をさせられるので早い段階でいなくなっちゃう。」
「いなくなる?」
「うん、命を落とすので」
「なるほど」
「物取りなどの軽犯罪は、指を落としたり腕を落としたりさせることもあるけど、基本的には5年から10年の刑務を行えば出ることが許されて平民に戻れます。」
「なるほど…」
「建前上はそうだけど、実際には食べ物などが満足にないから枯れ死病にかかることがほとんどで…。」
「枯れ死病?」
「うん。恐ろしい病です。全身骨と皮になって枯れたように死んでしまいます。」
「そんな病気があるのか?」
「うん。僕もそうなると思っていたぐらいで…平民にも増えています。」
ただの栄養失調かと思っていたが違うのだろうか?
知らない病気も多そうだ。
話が別方向に行ってしまったが、貴族の話をしていたはずだ。
「ロティさん、貴族に対して行うことや無礼になることはあるのか?」
「貴族相手?何か言われたら相手を怒らせないように、言われた通りがいいかな。面倒になるので、命以外は差し出したほうが楽かも。」
「それはまた…(随分と極端な話だ)」
「リュウジさんなら大丈夫だと思うけど、気を付けたほうがいいし、関わらないほうがいいと思う。」
なぜ隆二なら大丈夫だと思うのか?
隆二は少し引っ掛かりを覚えたが、ロティがロバに荷台を繋ぎなおし出発の準備を整えていく。隆二はその荷台へと乗り込んだ。
「さて、もう少し進みましょう。」
「うん、よろしく。」
またロバに引かれて数時間進んだ。途中、2回の食事をとり、ロティさんには胃に優しいだろう卵粥と牛乳を飲んでもらった。自分は、パンと牛乳を食べた。
食事の対価としてロティが金を渡してきたので、隆二は断り切れずに受け取った。
大きな岩陰に入り、荷台の周囲を枝で囲い2つの小屋を作って休んだ。囲いで覆った中で車を出して落ち着いた。
車の中で、ようやく隆二は弁当を食べることができていた。
翌日の昼を過ぎて、ロバ車はスターティアの石塀の前に立つことができた。