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スマホを持って異世界に行ったのに、検索ができない  作者:
第二章

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 「あれ…」

 「あなた!目が覚めたのね。気分はどう?」

 「不思議だ…妙にすっきりとしていて、動けるような気がする。」



 ローランは今なら動ける気がして、手をついて体を起こそうとした。気が付いた妻が背中を支えてくれる。

 簡単に上半身を起こすことができた。

 妻が背中に竹で作られた支えを入れてくれた。

 ずっとぼんやりとしていた気がする。霧散した意識が集まり自分を認識できるようになっていた。



 「これは楽だね…」

 「そうでしょう?ギルドのリリアさんが連れてきてくれた薬師様がくださったの。」

 「薬師様?もしかして高価な薬を使ってくれたのか?」

 「金額はまだわからないです。その、何も請求なさらずに帰られてしまって…」

 「は?そんなことがあるのか?」  

 「落ち着いたらリリアさんにお聞きしに行こうと思っていました。」

 「そうか、すまない…」

 「それよりも、あなたがここまで回復してくれてうれしいわ。今、薬師様から飲ませるように言われていたものをお持ちしますね。」


 

 しばらくして妻が持ってきてくれたのは、淡く白っぽいものだった。

 カップに入っているそれをスプーンで運んでくれる。

 ローランは、口を開けて食べさせてもらう。ここ半年ほど食べさせてもらっていたので、自然な反応だ。


 甘い…うまい…これは薬なのか?

 体に染み渡るような不思議な感覚がした。

 


 「これは…うまい…」

 「そうですね。これはとても甘くておいしいです。」

 「お前も飲んだのか?」

 「はい、1つをシーランと分け合いました。そうするようにと薬師様から渡されました。」

 「そうか…お前たちもすまない。」

 「いえ、昨夜このお薬を飲んでから体が軽いです。あなたもベッドから降りられるようになりますよ。」

 「そのカップを持てる気がする。」

 「これを?こちらをこぼしては困りますから、こちらの白湯を飲んでみてください。」

 


 妻が差し出したカップには、半分ほどの白湯が入っていた。

 白湯であればこぼしてもいいけれど、貴重な薬をこぼすわけにはいかない。

 ローランはそれを受け取るとカップを傾ける。自分の手で飲み物を飲むのはいつ以来だろう。自分で飲めたことが嬉しい。



 「あなた…」



 妻を見れば、妻が口に手を当てて涙を浮かべていた。

 膝の上には、薬の入ったカップがある。ローランは、白湯のカップを置くと薬のカップを手にした。スプーンで掬うが、スプーンを持つ手は震えてしまう。それでもどうにか一口飲めた。

 カップを口元へ運び、スプーンからこぼれてもいいようにして飲んでいく。

 いや、これならカップから少しずつ飲めばいい。

 ローランはスプーンを妻に渡して少しずつ飲む。

 すべて飲み干すと、妻が改めて白湯を持ってきてくれた。



 「あなた、白湯もどうぞ。」

 「ああ、ありがとう。」

 「それを飲み終えたら少し寝てくださいね。」

 「そうだな…」

 

 

 妻に背あてを抜いてもらい休んだ。

 寝ていて、もよおしてきて慌てて起き上がる。

 厠へ行きたいと思いベッドから足をおろして立ち上がった。

 


 「あなた…どうしまし…ローラン!」


 妻が慌てて寄ってきて、支えるように抱き着いた。

 

 「急に立ち上がって大丈夫ですか?」 

 「ああ、厠へ行きたくて…」

 「わかりました。支えますね。歩けますか?」

 


 ローランは慎重に1歩を出した。2歩、3歩…妻に支えてもらっているが、足を出せる。自分の体重を受け止めていられた。

 足はやせ細っているけれど、歩ける。

 


 「嘘みたいだ…歩ける!歩けるぞ!!」

 「ええ、あなた…歩いているわ。」



 厠でも妻の手を借りざるを得なかったが、どうにか用を済ませることが出来た。

 

 それから数日、薬師様がおいていったカスタードバーというものを飲んだ。食べ物は相変わらずなかったが、その薬を飲むだけで元気になっていくのがわかる。

 息子のシーランもやせ細っていたけれど、顔色は悪くない。

 


 「パパ、足が動くようになったの?」

 「あれ…そういえば…」

 「私が支えていなくても、杖がなくても歩けるの?」

 


 ふいにテーブルに手をついて立ち上がった。

 動かなかった左足を軸にしていた。



 「えっ…いわれてみれば…」

 「うそ…」

 




読んでくださりありがとうございます。

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