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スマホを持って異世界に行ったのに、検索ができない  作者:
第二章

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 村人がコインの代わりに見せてきたのは、宝石のついたネックレスだった。

 この村で扱われるような品ではなく、持ってきた村人が好んで購入するような品でもない。



 「これは…ルビーですか?」

 「よくわからないけど、この村でも作物が取れたころに貴族様がおいていったものだよ。」

 「そうですか、わかりました。何が欲しいですか?」

 「食べ物をたくさん。」

 「何人で食べますか?」

 「3人で…いや5人で…」

 「それであれば、蕪と小松菜を明日、明後日で食べてください。こちらのミニトマトときゅうりは今日と明日の朝くらいまでは食べられるかな?それと、特別にコメと塩をお渡ししましょう。これはスプーンに2杯をカップ4杯の水で煮てください。」



 ロティは野菜をかごに詰め、深皿にコメ、カップに塩をスプーンに1杯分入れた。



 「こんなに?いいのかい?」

 「これではまだ不十分ですから、家からカップを5つ持ってきてください。スープを差し上げます。」

 「ああ、行商人さん!あんたは天使だ!すぐに持ってくるよ。」


 

 それから数人、同じような人が続いた。

 宝飾品の価値など、食べられない世の中ではあってないようなものだ。庶民には過ぎた物で身に着けることもできず、持っていると知られれば危険にしかならない。

 今回、山積みの荷を見て勇気を振り絞って出してきたことがわかる。



 「ロティさんや、先ほどは申し訳なかった。」

 「いえ、気にしておりません。アイラさんはどうですか?」

 「うむ、眠っているがこれまでにないくらい顔色がよい。」

 「それはよかったです。村長さんも買い物はいかがですか?」

 「うむ、させてもらおう。村の者たちは終わったか?」

 「はい、おそらくは…」

 「では、そのスープを10杯分もらえるか?それと日が持つだけの野菜も欲しい。」

 「お時間がかかります。入れ物を用意してください。」

「うむ。すぐに用意しよう。」

「ありがとうございます。それでは商品をご用意します。こちらを飲んで待っていてください。」


 

 村長は金貨を1枚渡してきた。

 ロティは、村長が持ってきた籠へ塩の壺、それからカスタードバーを1組カップに入れ、スープバーを入れた壺も1つ入れた。もうひとつの籠には、野菜を盛り付ける。それから竹容器3つには、コメをたっぷりと入れた。1つには麦を入れる。入れるのを村長は横目で見ている。



 「あとはスープをご用意します。」

 「これはずいぶんと甘いな…」

 「そちらはカスタードバーです。お孫さんに飲ませたより薄めてあります。」

 「むっ…それは、アイラはかなりの甘さを味わったのか。そりゃあ目も覚める。」

 「そうなりますね。そちら、薬師がドロップにすると金貨1枚になってしまうという話です。幸いにも、広くのませたいと言ってくれているので格安でお分けしています。」

 「なるほどな…砂糖を使っているのか、それに…卵も…」

 「はい、よくお分かりで…」

 「これほどのものを小銀貨4枚とは…野菜はカモフラージュでこれを広くいきわたらせるように…んん…これ以上はやめておこう。買占めもしてはならん物だな…」

 「察してくださりありがとうございます。」

 「こちらのスープも特別なものです。肉の栄養を取れます。それと先ほどお渡しした中に壺があります。片方は塩、もう片方は小さな茶色のスープバーが入っています。半分に割って5Lのお湯に溶かしてください。コメや麦を大匙3杯ほど入れ塩を入れると、このスープのような味になります。」

 「なんと…」

 「野菜は数日しか持ちません。それが終わったら…1日1杯ずつ、そのスープを飲めばしばらくは命を保てるはずです。次のお約束はできませんが、頑張ってください。」

 


 ロティはそうして村長に大きな誤解をさせたまま、家の隣に止めた馬車で休ませてもらい、そして次の町を目指した。




 ロティが村を出て5日後、村人たちは購入した食べ物を食べつくしていた。

 村長は、あの日購入したスープは、家から出ることもできなくなった人たちに食べさせていた。それからカスタードバーも飲ませていた。

 6日目からロティに教わったようにスープを作る。毎回スプーンに数杯分のコメや麦も入れた。それを40数人村人と分け合った。

 スープバーは16本も入っていた。半分を毎日使うので1月分以上はある。

 村人たちに雑草など食べられる物を出してもらい、それも入れたスープを作り食べる。孫のアイラはベッドから起き上がれるようになり、スープを取りに来られない家へと届けに行ってくれる。

 

 それは、金貨1枚では到底見合わないほど大量の食糧だった。

 村人全員が1か月誰もかけることなく生きられるだけの食糧だった。腹を十分に満たすことはできなくても、動く力が湧いてくるおかげで冬に備えて家の修繕などを行う人たちが増えていた。

 


読んでくださりありがとうございます。

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