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スマホを持って異世界に行ったのに、検索ができない  作者:
第二章

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今日は長めです。お時間の余裕を持ってお読みください。




 「紹介するが、工業ギルドのギルドマスターだ。失礼のないようにしてくれ。」 

 「は?別ギルドのマスターが畑に詳しいのか?」

 「そうなるな…」

 「ギルドで売り出した耕作機はその関係で押し付けられたのか?」

 「そうじゃない。あれは、その方のご厚意だ。」

 「はぁ?」

 「使えばわかるが…とんでもなくいいものだ。大工ギルドで売り出した荷揚げ機や井戸の釣瓶が上げやすくなった滑車や水揚げ機も聞いたことはないか?」

 「水揚げ機は使ったことがある。商業ギルド近くの井戸に取り付けられていたが、棒を上下させるだけで水が出てくる道具だった。」

 「そうだろう。それらは全部工業ギルドのリュウジさんが開発したものだ。」

 「へぇ」

 「農業ギルドで耕作機の販売はするが、耕作機と荷揚げ機はギルド所有として2台ずつある。全部前借で、収穫できた物からその金額を支払うことになっている。これから、午前中はリュウジさんの元で教わり、午後は皆の畑を順番に機械を使って耕していく。これはお互いのためだから協力してくれ。順番があとになるものは不満だろうが、自分ひとりで耕すより早く耕せるのは約束する。」

 「ギルマスがそこまで言うなら」

 「ああ、そこまで言うなら従う。」

 「そうだな、このままならどうあっても冬は越せない。ギルマスの方針に従う。」


 

 リュウジさんの畑に到着したものの、畑の作物を見てギルドメンバーは絶句していた。

 それを見てリュウジさんは苦笑している。

 


 「皆さん、とりあえず…こちらへ座ってください。飲み物を飲んで落ち着いてから話をしましょう。」

 


 リュウジさんに促され、細長い板を囲むように並んだ椅子へと座った。

 椅子と言っても太竹の節を座面になるように高さを揃えた物だ。足になる側面の数か所が抜かれていて、持ち運びできるほどに軽い。

 

 リュウジさんが用意してくれたのはカスタードバーを溶かした飲み物で、ギルドメンバーのあまりの細さに気をつかってくれたようだ。最近、屋台で粥やスープが売られ、野菜も売られるようになったと言ってもまだまだ十分ではなく、また値も安くはなかった。



 「ずいぶんと色とりどりの野菜を育てているようだが、種はどこから?」

 「しっ」

 「あっ、失礼しました。」

 「いえ、構いません。種の出どころは言えません。手持ちを全て植えてしまったので、これらから種を取らなければならないのでね。そこはご理解ください。」

 「わかりました」

 「ですが、皆さんが畑をよくしたいという気持ちがあるなら、知っていることは教えます。」

 「お願いしたい!」

 「シドさん、さすがにこの人数を一度には無理だ。13人もいるだろ?元からいる4人と…そうだな3つに分けて週に2回ずつはどうだろうか?特別なことをする時には来てもらうが、基本は週に2回。1日に5人から6人でどうだろうか?」

 「それで構わない。」

 「ちょっとギルマス」

 「ここで週に2日教わる。それ以外の日はうちの畑で朝の作業を教える。午後2~3時間はギルドの畑や皆の畑で教える。それならいいだろう?」

 「わかった」

 「せっかくなので、皆さんそろっている間にこの絵図の見方をシドさん説明してください。」

 


 シドは、隆二に促されて4年間のスケジュールを、壁に掛けられた絵図を使い説明する。

 ギルドメンバーはそこまで先を考えて仕事をしたことがなかったので驚いたが、大人しく聞いていた。

そして、そこまで先を見ているらしい隆二を不気味でとんでもない男だと思った。

 


 それから数日の間、シドは隆二の畑に行く以外の日は自分の畑にギルドメンバーを集め、雑草抜きなど日常作業を教えた。

 南瓜は見たことのない野菜なので、皆興味津々だった。リュウジの畑より1月遅れで植えているので、そちらで学んだことをこちらで実践できていた。


 午後からは、集団でメンバーの家を周った。耕作機を引いて畑を耕すために6人。その間に元厠の土を上げるために7人。

 耕作機は2台あるので、3人で1台を引く。2台で左右から耕し、それが終わったら横に耕していく。それを終えると厠から掘り出した土と竈の灰を入れた木箱を乗せて引いていく。耕作機が動くと木箱から少しずつ落ちてそれを耕作機が混ぜていくのだ。

 土揚げ担当は、掘る前に畑の土を近くまで運び山にした。それから、大工が使う荷揚げ機を使って掘り進めた。掘った土を荷揚げ機で上げるので、思ったほど大変ではなかった。

 


 「その縦長の結晶はこの壺へ集めてくれ。薬になるらしい。」

 「へ?そうなのか?わかった。」

 「え?どれ?」

 「この細い白いのだと。」

 「へぇ、こんなものが薬になるのか。」

 


 こんな調子でそれぞれの畑を耕して回った。荷揚げと耕作機を引くメンバーは入れ替わりとし、いろいろな作業を行ってもらう。

 13人いるので、一回りすると2週間を過ぎて丁度良く最初の畑へと戻った。

 

 


 「今日から、種蒔の準備をする…わかっていると思うが、水撒きを手でするのは大変だ。そこで水揚げ機と水を流す筒が必要になる。」

 「ああ」

 「これは、金のかかることだ。金か貴金属などある者にはそれで売ろう。ない者は使わなくても育つ作物を育てることになる。どうする?」

 「うちは水揚げ機を買えない。」

 「うちは買いたい。」

 


 手を挙げて水撒きの道具を買い求めた者が6人だった。

 その畑には畝作り用の道具を引く。これは左右から土を集めて盛り上げる道具だ。

 それから、買える数に応じて竹筒に穴をあけたものを運び込み、配置する間隔を相談した。それから水揚げ機を1台入れていく。しばらくの間は、水揚げ機は持ち運ぶしかない。

 畝には、大豆を植える予定だ。

 種は貴重なので3粒ずつ植えることは出来ない。

 


 「種は貴重だ。数がないので、芽を出せるようにしてから植える。」

 




読んでくださりありがとうございます。

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