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7月の始めに畑を耕す耕作機の販売が始まった。
畑を耕したところで作物が育たないのに何を言っているという声も上がった。
そこで、シドはギルド所有の畑へとギルドメンバーを集めた。
そこには青々とした緑が一面に広がっており、研修に参加していない者たちは茫然としていた。
「これは…」
「麦ではないな?」
「ここは麦畑では?」
「いやだが…これほど育っている作物などここ10年は見てない…」
「見事だろう?」
「ああ、これはなんだ?」
「これは、まあ…雑穀だ。」
「雑穀?それはなんだ?」
「粟、稗、一部大麦も入っているが…」
「はぁ?」
「なんでそんな…見る限り多品目が雑多に植えられているようだが?」
「畑を使えるようにするためだ。それに種がないからな、手に入ったのがたまたま稗、粟大麦と5種類くらい混ざったものでねあるらしい。食べて食べられないこともないが、より分けていないからね。」
「食えるならいいじゃないか」
「ギルマス、畑を使えるようにって言うのはどういう意味だ?」
「俺たちがやっていたことは間違っていたらしい。」
「は?」
「どういう意味だ?」
「小麦畑は小麦を植えるもの、野菜畑は野菜を植えるもの、芋畑は芋を植えるもの…それは間違えだった。」
「なっ」
「そんなバカな!」
シドの言葉に小さく声は上がったが…ほとんどの者が絶句した。
「そんなバカな。今まで親父だってじいさんだってそうやってきたんだぞ?」
「そうだな、結果年々収穫量が落ちていただろう?」
「それはそうだが、だから土地を開墾してきたじゃないか。」
「畑はいろいろな作物を育てたほうがいいらしい。」
「…それで、これを見せておれらにどうしろと?」
そこは堆肥もない元小麦畑だった。種もほぼ尽きていたため、蒔くことができたのは隆二が用意した鳥の餌用の雑穀だった。隆二がアイテムリストで手に入れた鳥の餌である雑穀のミックスは籾のままの物が半数を占めていたので、それらを蒔いたのだ。
それらは人間が食べるためというよりは、畑を肥やすためだ。
クローバーを播いてもいいのだが、少しでも利になる方がいい。雑穀であれば、隆二が買い取れる。そして藁には使い道が多いし、最終的には焼いて草木灰にできる。
「これを見てわかる通り、麦畑に麦を植えても育たないが、他の物が育つのはわかるだろう?しかも、ここは皆が知っての通り10数年も枯れた土地だ。誰も何も植えなかった。それでも、これだけの作物が育っている。」
「それはわかった。だが…」
「もう一つの畑を見せる。うちの畑だが、あるお方に教わって試しているところだ。」
シドは、歩いて15分の自宅の裏へと案内した。
畑の半分に南瓜を植え、残り半分に小松菜と蕪を半分ずつ植えていた。毎週4畝ずつ、1週間置きに植えて出荷時期をずらしていた。すでに4週経過していて、最初の畝の蕪は膨らみ始めていた。
隆二の畑では1畝つだが、うちからは曜日をずらして1畝ずつ出荷できれば週に5日ずつは蕪と小松菜が100~150ケずつ売ることができる。
「なっ…」
「最近屋台に出ている小松菜や蕪はこういう事か?」
「それはうちの畑ではないな…うちはここの畝が最初だ。毎週蕪と小松菜を4畝ずつ植えているが出荷はあと2週間後だろう。」
「それでも、これほどあれば…」
「ああ、最近どこかから入ってきた米とやらの粥が出回っているが値が張るから、週に1回か2回しか買えないが…これだけ育つなら、葉っぱ物であっても腹いっぱい食べられるようになるのでは?」
「俺もそう思う」
「どうやったらこんなに育つ?おれの畑は野菜を植えたってこうはならん。」
「そうだ。俺たちにも教えてくれ。」
「もちろん教えるが、できれば…直接教わった方がいい。これはその方に教わったことを実践してみた結果だ。」
「わかった。そのお方とやらはどこにいる?」
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