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スマホを持って異世界に行ったのに、検索ができない  作者:
第二章

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221



 隆二とリリアが見守る中、奥さんは最初に汁をスプーンに掬い、夫の口へ運んだ。

 口が薄く開き、汁が流れていく。男の喉が上下し飲み込んだのが分かった。2口飲ませたところで、男の顔色がよくなった。



 「あなた!」

 「少し体を起こしましょう。奥さん抱き上げてください。」

 「はい、あなた…少し起こしますよ。」



 男はさらに3口汁を啜ったところで目をしっかりと開けたので、隆二の作った大きな斜めの台を背中へと差し入れた。体を少し起こした状態となるので、誤嚥を防げる。

 一度には食べられないかとも思ったが、さすが誠実だ。食べねばならぬと分かるのか、男は全てを食べることが出来た。そしてすぐに眠ってしまった。



 「ありがとうございます。夫の顔色がずいぶんとよくなって…この御恩は一生忘れません。」

 


 奥さんはそう言うと、床に伏したまま泣いてしまった。

 隆二は、カスタードバーを1組渡し、目が覚めたら夫婦で飲むようにと指示を出した。奥さんも決して顔色がいいとは言えなかったのだ。

 帰りがけに子供の姿が目に入った。部屋の隅に膝を抱えて座っていて気配がなかったのだが、そのやせ細った体にギョロリとした目が光って見えた。隆二は、カスタードバーをさらに1組おいていく。





 隆二達が帰った後、誠実の実が入っていた器に妻は湯を入れて飲んだ。

 甘い果実の香りがしていて、味が気になっていたのだ。子供も近寄ってきたので飲ませた。交代で1口ずつ飲むそのお湯は、ほんのりと甘くて幸せな味がした。



 翌朝、目が覚めた妻は体が軽くなっていて驚く。

 ベッドにいる夫を見ると、血の通っている顔色に戻っていて死の淵から抜け出せたことがわかった。げっそりとやつれた感じも薄らいでいた。

 そうだ、昨夜リリアお嬢様が連れてきた方にいただいた果物を食べさせたのだ。器いっぱいの果物を食べさせられるなんて、ありがたいことだった。

 そうだ、あの方にカスタードバーを溶かして飲むようにと言われていた。

 妻は、少ない薪で湯を沸かし、8本あるカスタードバーを1本ずつ溶かした。

 ベッドにいる夫が起きるのを待つ間、妻は先に飲み始めた。息子も呼び寄せる。

 

 

 「ゆっくり飲むのよ」

 「うん…」

 「甘い…」



 甘くて、体に染みわたっていくのがわかる。あまりにも美味しくて、あっという間に飲み干してしまった。息子を見ると、カップを両手で持ち飲み干したようだけど、カップの縁の内側をなめていた。少しでも甘さを味わいたい気持ちはわかる。


 これなら、回復し始めた夫も元気になるだろう。

 妻は、夫が目覚めるのを楽しみに待った。

 

 



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