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スマホを持って異世界に行ったのに、検索ができない  作者:
第二章

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 「親方、すごいっすね。」

「原料を用意してきて、前金にこんな大量の食料を手配してくれるなんて…」

「しかも生きた角兎だ…」

「かごいっぱいの野菜なんて奇跡でも起きてるんすか?」

 「ああ本当だな。」

 「あの人何者ですか?」

 「それは知らんが、ヒイロやシドも一目置いているようだ。気のいいひとだが、誠実に対応するように言われている。」

 「へぇ、すごい人なのか。」

 「すごい人だが、ものすごく知識があるのだろう。今回の依頼の品も何に使うのかさっぱりわからん。特許申請もものすごい勢いでやっているらしく、工業ギルドを立ち上げるらしい。今は商業ギルドと農業ギルドが窓口を代行しているが、窓口もつくるんだろうなぁ。」

 「へぇ、親方詳しいっすね。」

 「そりゃああれだ。職人ギルドに推薦状を求めてきたからな。その礼として、この大量注文だろうなぁ」

 「そういう事っすか」



 最近、週に1度ずつ蕪や小松菜が売られるようになった。

 その前から、それまでは食べたことのなかった米を使った粥が売られるようになっていたし、妙なうまさのあるスープも売られるようになっていた。

 町では麦一粒でも争うような状態だったが、あの男がやってきてから枯れ死病の特効薬まで商業ギルドで売られていて、亡くなる人はかなり減った。

 このカスタードバーは特効薬を飲んで目が覚めた時に食べさせる食べ物だ。

 ヒイロが言うには、薬師様の作るドロップ剤と同じ製法らしい。ドロップというと高価なものになってしまうから、バーという名にしてお湯で溶けるように工夫してくれたと聞いていた。

 薬師ギルドの手前、食品だと言い張っていて、あの神薬でさえ「これは日常的な飲み物です。」とほざいているらしい。

 まったくふざけた男だが、薬師ギルドを通さずに格安で売ってくれているのだ。死病の薬は金貨何枚も数百万ダルの支払いを求められるものだ。それにも関わらず一度飲むだけでよい薬が50万ダルで売っているのだから、薬師ギルドの立場がない。

 それを買えないとしても、小銀貨3枚の3000ダルで買えるカスタードバーなるものを飲めば、疲れは吹っ飛び、寝たきりの者でも数回飲ませると起き上がれるようになる。

 50万ダルを用意できない者は、カスタードバーで家族が持ち直すことに希望を託す者も多いらしい。

 

 ドニーは、娘とその夫を枯れ死病で亡くしてしまった。二人の忘れ形見である孫息子2人は骨と皮の状態だった。

 神薬2回分を手に入れて、飲ませた時には2人はすぐに眠ってしまい心配でついていた。翌朝、目が覚めると起き上がれるまでになった。教わった通りにカスタードバーをお湯で溶かして飲ませると立ち上がれるようになり、それから数回カスタードバーを与えると走り回れるほど元気になったのだ。

 ドニーはリュウジのためならなんだってするつもりだった。

 利益も生活分だけ賄えればいいと思っていた。それほどに感謝していた。

 

 おかげで妻は、孫息子の世話で疲れている。

 弟子たちの賄いの用意も大変なのだ。これだけの食糧があればしばらくは持つだろう。だが、その前にカスタードバーを飲ませてやりたい。

 ドニーは、カップにカスタードバーを入れると、湯を入れてよく混ぜて溶かした。



 「おい、ちょっといいか?」

 「あなたどうしました?」

 「これを飲め」

 「これは…カスタードバーですか?」

 「そうだ。お前は疲れているようだからな。倒れないうちに飲みなさい。」

 「それはあなただって」

 「わしは問題ない。」

 「それなら、半分こにしましょう。」

 「半分こって、お前なぁ…かなわんな」

 「夫婦ですもの。2人でいないとあの子たちを育てられませんよ。」

 「そうだな。飲むか。」

 「あら、甘くておいしい。」

 「薬とは思えないな。こんなに甘いのなら子供たちも喜んで飲むはずだな。」

 「そうですね。これ…お砂糖が使われていますよね?」

 「まさか、そうだったとしたら、小銀貨2枚や3枚では売れないだろう?」

 「それもそうですよね。」



 妻はふふっと笑っているが、あの男ならやりかねないと思ってしまった。なにせ、半分飲んだだけだというのに、体中から力が沸き上がるのだ。こんなものを1度に飲んでしまえば大変なことになるだろう。

 


 「さっき仕事が大量に入った。前金替わりに食料を受け取ったからこちらに運ぶぞ。」

 「まぁ!それはいいですね。私も取りに行きます。」

 




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