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スマホを持って異世界に行ったのに、検索ができない  作者:
第二章

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 隆二は、兎のゲージの改良版をいくつか注文した。

 今後仔兎が大人になった時に雄1羽に対して雌4羽から8羽を入れられるようにと考えた。いくつか試して、雄と雌の割合は1:5程度だと効率が良いとわかるのは、半年ほど経ってからだ。

 角兎は3か月ごとの出産をした。1か月半雄と過ごし、離れて1か月で出産し半月くらい子育てをして離れる。うまくいけば年4回、何もしなくても年3回の出産が出来るようだ。

 角兎はカメラ情報による年齢からの推測では2年ほど子を産むようなので、その間に6~8回の出産をする。成獣になる仔は1度に7~8羽だ。1羽の雌は少なくても42羽、多ければ64羽に増えることになる。

 檻やゲージはそれなりの数が必要だった。



 ゲージを作ってくれるのは、金属加工をする職人たちだ。竹では食べられてしまったので高価な金属を使うしかなかった。

 最終的な数は、雄雌を入れる繁殖用の大型ゲージ10台、出産用の中型ゲージを50台、子兎用の浅型ゲージを50台とした。子兎の雌は出産用の中型ゲージでそのまま育て、雄は子兎用ゲージで育てる。ある程度まで育てば、繁殖用を残して販売にできるだろう。


 

 隆二からの依頼は製造数も多いため、職人たちはほぼ専属での仕事となりはじめていた。

 通常、職人たちは前金を受け取ってから仕事を始める。



 「リュウジさん、大型ゲージ4台と中型ゲージ10台、浅型ゲージ10台の仕事は受けられねぇ。加工は出来るが、問題は…材料の鉄鉱石だが…手持ちでは半分しか作れない。」

 「持ってきています。運び込みますね。」

 


 隆二は、工房を出ると鉄鉱石の入った木箱を12個取り出し、荷車2台へと乗せた。それを見て、ロティはあきれている。

 森の中に縞状の断崖を見つけたので、その近くの川辺に転がっていた石だった。縞状鉄鋼層が露出していたのだ。掘削せずに崩れたものを集めただけだが、まだインベントリには余裕があり、木箱に入れてあったのだ。

 念のために合流したシアンは慣れたもので、一緒に運び込む。今、運んできましたという風を装っていたが、親方たちも隆二の異常さには気が付いていた。

 とても人力で運んできたとは思えない量だったのだ。しかも大人1人と成人近いとはいえ子供2人だ。

だが、そんな事を気にしていても仕事にはならない。荷車を運びこむと、その箱の中身を見て職人たちは目を輝かせた。



 「こいつはいい鉄鉱石じゃないか」

 「そう言ってもらえるとよかった。これで足りるか?」

 「もちろんだ。それと…代金だが、加工賃になるな…銀貨60枚になる。前金で銀貨12枚だが…できれば食料を都合して欲しい。」

 「それなら、精米を4㎏、押し麦を2㎏、特製塩200gと…カスタードバー2組、角兎1羽でどうだろうか?」 

 


 親方のドニーは鼻を膨らませた。

 


 「そんなにいいのか?」

「かまわない。体力がいるからね。」

「それで、引き渡しの時だが…」

「銀貨48枚相当になる。欲しいものはあるのか?」

「米や麦は欲しい…」

「それなら…精米16㎏、押し麦8㎏、特製塩1㎏と角兎2羽でどうでしょう?」

「それは素晴らしい、やる気が出てくる。」

「期待しているよ。それでは、食料は後で持ってくる。」

 


 隆二は、一度家へ戻り雄の角兎を1羽ゲージに入れた。小屋で生まれた雄だが、生まれて2か月も経てばそれなりに大きくなっていた。

 米と麦は、袋から出して壺へ入れる。特製塩…スライム塩はインベントリの壺を取り出した。カスタードバーもインベントリから出し8本ずつ壺へ入れた。隆二は畑に行き、赤く色づいたミニトマトときゅうりと小松菜を数本、かごに入れた。



 「ドニーこれは前金だ。受け取ってサインを頼む。それとこれはよろしくということであいさつ代わりだ。」

 「おぉぉぉ、こんなに沢山いいのか?この赤いものはなんだ?」

 「ミニトマトだ。塩をつけて食べるとうまい。」

 「どれ」

 


 ドニーは湯冷ましでミニトマトを洗うとスライム塩を少しつけて口へ入れた。

 


 「これは果物みたいだな。甘くてすっぱくて塩とよく合う。」

 「そうだろう?暑い中で鉄を扱うにはいいはずだ。」

 「確かに受けとった。1か月後には出来上がる予定だ。」

 「わかった。用意しておく。」



 ドニーは、手元に残された食料を前に震えていた。





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