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洗濯場へ向かうと、オーナーさんが待っていた。
「アカサさん、おはようございます。」
「おはようございます。今日、明日、よろしくお願いします。」
「では説明しましょう。このタグですが同じものを3個ずつ用意しました。」
オーナーさんが出したトレーには小さな枠があり、縦5列横五行の飾りが1枠空けて入っている。3枚ずつ同じ物が用意されていた。8種類の飾りが赤、青、黄色の3色で作られた飾りは太い糸で形が作られている。
「これは…」
「なくさないでくださいね。」
「ええ、もちろんです。お借りします。」
「持ち込んだ人に、対になる飾りを渡すといいでしょう。大量に持ってきたなら籠につけ、1~2枚なら1枚ごとにつければいい。」
「なるほど…たしかにそうすれば間違えないですね。」
「そうです。それで取れないように縫い付ける必要はありますが、すぐにとれるようにもしなくてはならない。それでいて洗濯の間に取れては困りますからね。そういう縫い付けはできますか?」
「ええ、仮止めしておけばいいと…」
「それならばよかった。では、がんばってください。こちらに仮縫い用の糸と針も用意してあります。」
「ありがとうございます。」
「うわぁ…なにこの針、新品だよ。錆一つないよ。」
「へぇどれ?本当だ。きれいだね。」
「ちょっと見てよ、これ…糸が色糸だよ。何色もあるよ…これを使うなんて…なんだかもったいないねぇ…これは捨てないように使わないと…」
セイがぶつぶつと言い始めた。
セイが持ってきた商売道具とは、見かけそのものが違う道具だった。
その日、客は持ち込むとセイが確認をして、飾りをつけてから同じ飾りを客へと渡してもらうことにした。
「すいません、今日からは洗濯物1枚で銅貨5枚前払いとさせてもらいます。」
「値上げかい?」
「はい、お預かりの品の間違い防止にいろいろとかかりまして…」
「そんなのこっちには関係ない…あらぁきれいだね。」
「これをつけて洗います。お返しの時にこれをお持ちいただければ、その時に外してお返しします。」
「なるほど、同じ形を探すんだね。」
「そうです。」
「その間はこの飾りをこうやって腕につけてください。」
「そりゃあいいねぇ。」
用意された飾りの1つは伸び縮みする紐がついていた。この飾りひとつでいくらするのか見当もつかない。でも、服と交換にもらおうなんて人は出てこないだろう。
縫子がいることで、補修の依頼も入った。その時はセイの言い値でやってもらうことにした。
売上を入れる金箱は用意してもらっていた。商業ギルドへこのまま持ち込むように言われた。
セイの売り上げは別の箱に入れてもらう。
飾りをつけているので、まとめて洗うことができた。脱水機も遠慮なく使える。濯ぎの間は付きっ切りになるが、それでも籠3つ分の大量依頼と1枚から数枚の依頼が入り60枚越えの依頼をこなした。
大事なのは客が水浴びをしている間に洗い終えることだ。そうしないと、帰るのに間に合わなくなる。
夕方には疲れ切っていたので、店じまいにした。
飾りがそろっていることを確認して、金箱と一緒に商業ギルドへと顔を出した。
アカサとセイは別々の部屋へ通され、金箱の中身を開けた。
「銅貨185枚と小銀貨14枚ですね。」
「そんなに?」
小銀貨32枚と銅貨5枚も稼いでしまったようだ。
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