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「うわ~ここに住むの?」
「そうだよ。ここで仕事をして生活していくんだ。」
「そっか、それなら僕も手伝う。」
「うん、私も」
「ありがとう。馴れるまで大変だろうけど一緒に頑張ろう。」
トントン。
ドアを叩く音に出ていくと、ヒサラさんがいた。
「今入口を閉めたからね。道具の洗い方を教えるよ。」
「ありがとうございます。」
レイラは子供たちと一緒にヒサラから道具の洗い方を教わる。
「ふぅ…ここでこうやって置けば乾くからね。さあ、汗を流してこようじゃないか。」
ヒサラさん一家と水浴びをした。その時に昨日の石鹸と同じものを4つ受け取った。その1つで今日も体を洗う。
共同調理場へ向かうと、テーブルが置かれていた。
「あたしらの食事は、客と同じものなのさ。大人も子供も同じ量だから、あとは家族でうまくやりくりしておくれ。」
「はぁ…」
「朝食はね、ちょっと見慣れない物を用意するから楽しみにしておいで」
「朝もいただけるの?」
「もちろんだよ。仕事前にしっかりと食べないとね。それとこれは明日の朝までの湯冷ましだよ。」
「ありがとうございます。あの…このスープって卵が入っていなくても美味しいですね。」
「そうだろう。スープバーを使っているからね。」
「スープバーですか?」
「ああ、肉や野菜の美味しい味を固めた物だよ。滋養によいものが入っているのさ。」
「そうですか。どうりで…」
「うん?」
「昨日、こちらでスープを飲んでから、体が軽くて動ける気がします。」
「そうなのかい?それなら毎日食べていれば元気になるね。」
「はい!」
食後に湯冷ましの入った薬缶を受け取り、家へ帰った。カウンターの奥に乾いた道具を重ねて仕舞う。薬缶は、1Fの小部屋のテーブルに置いた。テーブルのところには竹のコップが3つ置かれている。
この建物はカウンターのところに金箱があり、足元には洗濯石鹸の樽が積まれている。同じ広さの隣の小部屋は板張りになっていて一段高い。足の短い丸テーブルが置かれていた。
これは、床に座って使える高さなのだろう。子供が小さいのでその方が気楽ではあった。でも、それなら、靴を脱いで上がるほうがよさそうだ。子供たちもそのほうが自由に動ける。
レイラは水を入れた盥を用意した。子供たちが上がる前に足を洗わせた。自分も足を洗って板の間に上がる。
階段を上ると、左右に板張りの部屋がある。階段のところには腰高までの手すりがあり、落ちないように作られていた。
部屋には何もないのでガランとしていた。持ってきた荷物から木の枕を取り出した。
親子3人で横になって手足を伸ばしても十分に広い。今朝まで肩身が狭い思いをしていたのに、突然小屋を1つ借りて働ける身分になれるなんて夢みたいだ。
「おかあさん、昨日も今日も美味しいの食べられてすごいね。」
「そうだね。ここでずっと生活できるように頑張るね」
「うん」
「川は危ないから近寄るんじゃないよ。」
「うん」
「明日またおいしいの…たべ…」
レイラ親子は、移り住んだ小屋であっという間に眠ってしまった。
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