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19 ロバと子供①


 隆二がこの世界に来てから2週間を過ぎていた。

 岩陰に来てから数日、周囲を散策していた。

 荒野が広がっているだけなので、目新しい発見もない。見つけた別の岩陰に花や草が複数生えていたら数本を収穫しておく。車に戻りゆっくりと確認する日々を過ごしていた。


 道から外れたところの岩を1つ収納して見たものの、ただの岩だったのでそれ以上の回収はやめた。一つくらいは万が一の時に使うかもしれないからそのままストックしていた。


 しばらく歩いていると、荷馬車が1台放置されている?

 いや、よく見るとロバもいる。だが、あるはずの人影がない。

 ロバはゲッソリとしていて、瞳が淀んでいた。


 「お前、どうした?水のむか?」

 

 隆二は、バナの葉の入れ物(水)を取り出した。ロバの前に置くと、すごい勢いで飲み始めた。隆二はいくつかの水を取り出し飲ませた。ロバは水を飲んで落ち着いたらしく、荷台を気にしている。

 

 「誰かいるのか?」


 隆二は、声をかけながら荷台へと近寄った。荷台といっても幌のない四角い箱に車輪がついているだけの台車のようなものだ。

 動かすと下に人が倒れていた。

 子供だろうか?140㎝くらいしかなさそうな人だ。


 「おい!目を開けろ!!」

 

 肩を叩いて声を掛けた。

 

 「ん…」

  

 おっ…生きている。

 ロバの様子を考えても、脱水だろうか?隆二は、リュックサックの中からスポーツドリンクを取り出した。本当は生理的食塩水がいいのだろうけれど、手持ちがない。スポーツドリンクなら多少甘いけれど、水よりは飲みやすいはずだ。

 

 「飲めるなら飲め」


 隆二は、ペットボトルの口を当てて慎重に飲ませる。子供は、目を開けられないようだが、飲み込んではくれているので、半分ほど時間をかけて飲ませた。

 あまり沢山飲むのもよくないだろう。

 少し様子を見ている間に、子供はまた眠ってしまった。


 前へ戻ってロバを動かそうと思ったが、

 ロバはムシャムシャと何かを食べていた。周囲には枝が落ちているので、そうかバナの葉を食べているのかと気がついた。


 野ざらしの場所なので、日差しが強い。


 「ここは日差しが強いから、移動しよう。歩けるか?」


 ロバを撫で大人しいので、荷台を起こすと子供を乗せた。手綱を引きながら少し歩かせて日陰へと移動した。

 日陰についてから、ロバのハーネスから荷台を外し、杭を建てて繋げなおした。全身に荷台がかかっているよりは楽になるはずだ。

 

 荷台にいる子供は寝たままだが、日陰になっただけ少しはいいはずだ。いつからあそこにいたのだろう?ロバの様子からは、それなりに長い時間1日以上はいただろう。

 バナの葉は入れ物になるくらいなので、硬いはずだ。もっと柔らかい草のほうが食べやすいだろうに。

 隆二は、またバナの葉の容器(水)を取り出し、草フォルダから数の多いシロツメクサや芝生に使うような草を取り出した。目の前にこんもりと盛られた草と並べられた水にロバは顔を突っ込んで食べ始めた。

 

 「焦るな焦るな、葉っぱは逃げないぞ」

 

 ロバを撫でながら、子供の様子を見た。

 荷台には、空の木箱がいくつか乗っている。他には桶と樽があるのでおそらくはロバ用なのだろう。飼葉がないのは食べつくしてしまったのだろうか?それとも盗賊か何かに襲われて、何もなくなったか?


 隆二は、あの集落を思い出した。

 どうする?この子供が目覚める前にここを離れるか?またあの時のような目には合いたくない。

 

 だが、このまま放置してはロバもこの子も野垂れ死にするだろう。

 隆二は、手持ちのバナの葉の容器の水を樽の中へと出した。桶には飼葉替わりに草を出しておく。


 子供は、もう少しスポーツドリンクを飲ませて、食べ物を出しておけばいいだろうか?俺は離れてもいいかな?いやでも、せっかく助けたのに…このままにするのも心残りだ。




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