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隆二は、工場の女性たちに次の仕事を教える。
「皆さん、今月は今までと違う作業をしてもらいます。」
「はい」
「ここと裏庭に木箱がたくさんあります。こちらには、このような実が入っています。これをこの機械を使って絞ります。絞ると、このように赤い液体が出てくるので、このまま一晩おいておきます。すると透明な液が浮いて、下に赤い液に分かれます。透明な上澄み液だけをこちらの小さな樽に集め、こちらの大きな樽に赤い液体を入れます。」
「はい」
「赤い液体の樽はこのまま外へ置いて置き、小さい樽は裏庭近くのこの場所に並べておいてください。」
「はい!」
「今の作業は、3人くらいでいいと思います。水汲み・洗濯・その他で2人、あとの5人の方は、こちらでこの青い球を薬研で粉にしてください。」
「はい」
オイルの実は20箱、青スライムの核は5箱出してある。他に赤い実を入れる壺とオイルを入れる小さ目の樽はそれぞれ20個ずつ置いてあった。
隆二は、新たに小屋を建てていた。
そこには、男性2人がいた。
「これは旦那様、飲み物ありがとうございました。」
「少しは元気になりましたか?」
「へぇ、おかげさまで。」
「では、作業を教えます。こちらの鍋にこの樽1つ分の中身を入れ~」
男たちが聞いたことを間違えないように、竹板に手順と量を絵で書いていた。それと現物を見せながら説明する。男たちは、樽に入っているものや壺に入っている粉が何かは知らない。
素材の本体を知らないことで、作り方が漏れても同じものは作られない。
また、材料が分かったとしても、ここに持ってくる前に隆二がやっている作業を知らないので、まともな製品を作ることはできない。
男たちは、隆二に教わった通りに青い液体を作り出した。その青い液体は、妙につるつるとした薄緑色の容器に10Lずつ入れられた。
この薄緑色の容器は、隆二が竹と深緑スライムなどで作り出したスラプラ竹容器だった。施策段階のため、スライムの使用量が多くかなり丈夫だった。
この後、改良し市販品の容器にはペットボトルで型を取った容器が使われるようになっていく。
男たちは2週間後、固形石鹸液も作りはじめた。出来上がった溶液は、型となる半切りの竹へと流し込んだ。普通の固形石鹸と同様に、完全に固まった2日後に切り分けて空気に当てる。2週間放置すれば、固形石鹸の完成となった。
オイルの実とシャボン草で作った石鹸は、地球でいうところのシャボンの香りがほんのりと香りとてもいい匂いだった。
この世界の石鹸は、主に貴族たちや豪商が使っていた。
それらでさえ獣脂が使われていて、植物油を使ったこの石鹸はかなりの高級品となるが、隆二にその自覚はなかった。
隆二は、商業ギルド経由で川沿いの土地の使用許可を取っていた。
川なので、当然他の人たちも洗濯に来る場所だが、護岸整備もしたため囲いを作っていた。この場所には小屋を建て、さらに追加で小屋を2軒建てていた。
出入口すぐの小屋の1階には入場料の支払いをする受付があった。受付では希望をすると洗濯石鹸も売っていた。そんな客は少ないので、もっぱら工場の女たちが仕事着の洗濯に来た時に渡すだけだ。
洗濯場の水槽が1つ、水浴び場の水槽が2つあり男女で別れていた。
水浴び後に洗濯をする者もいるので、どちらも使い放題だ。
小屋の2階には、部屋が2つある。小屋と小屋の間には炊事場があり、屋根がついていた。
ここに雇われたのは、幼い子供のいる女たちだった。
ヒサラは2人の子持ちで上は8才、下は2才と幼い。さらに姉の子を2人預かっているので、子供を4人も抱えていた。そのため、小屋の中での受付はとても助かる仕事だった。
受付の場所の横には居間があり、子供たちを遊ばせられるのだ。
受付は、小さな窓からお金と石鹸のやり取りができるようになっていた。
隣の小屋にも幼い子供がいるララが住んでいた。
ララの仕事は、炊事場で湯を沸かして売ることと、麦の入ったスープを売ることだった。麦スープは2番お玉1杯で小銀貨2枚だった。
どちらの小屋にも金箱がおかれていて、売り上げを入れておく。
それは週に1度顔を見せる旦那様かシアンさんが持っていくことになっていた。
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