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人によっては残酷な表現があるかもしれません。
ご注意の上、お読みください。
「その…行き倒れや、盗賊たちを枝や藁で囲って火葬もしていた。」
「そうだった。」
「その後はどうしていましたか?」
「そのまま燃やし尽くして、畑にすきこんだ…」
「なるほど…」
「リュウジさんは怒らないのか?死者への冒涜だろう?」
「ああ、そういうことですか。こちらでは土葬が普通ですか?」
「そりゃあそうだろう。」
「俺の育ったところでは火葬が当たり前です。もちろん焼いたあとのお骨は壺に入れて墓に入れるのですが…、土地柄によっては墓の下の土にまきます。」
「まく?」
「ええ…人も動物もみな土の上で生きる者は土に還るのです。」
「へぇ…そういう考え方もあるのか。」
「そうです。ですので、そう考えると…畑で土に還れるならそれはそれでいい供養だと思いますよ。」
「そうか…」
身元引受人がいない者も交通手段も通信手段もないこの世界では仕方がない。行き倒れた先で弔うしかない。盗賊は論外だ。
人権は考えなければと思うが、人を害する者への配慮など必要とは思えないのは本音だった。
隆二個人でもそう思ってしまっているが、この世界では亡くなれば土葬をする。
盗賊は殺しても罰せられることはない。罪を犯せば奴隷になるか死刑かの2択だ。もちろん選ぶのは犯罪者ではなく、領主などの権力者だ。だが、連絡手段がない以上、被害にあった者たちが罰しても大きな罪になることは少ない。
「それらは畑にはよかったのでしょうね…」
動物性のもの、こいわしなどの小魚を畑に捲くのは、昔からされていたことだ。土に骨のカルシウムもわからなくはない…。
そういえば…卵の殻を鉢に入れるのは見たことがある。
卵の殻は卵殻カルシウムで売られていたな…。インベントリに入れていた卵の殻の使い道はできた。
「その辺は、難しいところもありますから…獣を仕留めた時には、骨は畑で焼きましょうかくらいで」
「そうだね」
「うん、ないものはないし。できることで…」
「とにかく、このように肥料をやり輪作をすることで畑からは収穫し続けられるようになるはずです。」
「おぉ」
「では、陽も上がってきましたしとうもろこしの受粉にはいい環境です。これから受粉作業をしましょう」
「受粉作業?」
「はい、雄蕊を雌蕊にくっつけて実をつけさせます。」
「はぁ…どうやって?」
「ヒロ、シアンも来なさい。」
隆二は7人を連れてとうもろこしの畝に来た。この畝は40本ほどしかなく、それがいくつか続いている。
「このように一番上にあるのが雄蕊です。触れて黄色い粉がつくなら時期ですからここから折って、これをこの房全体につくようにまぶします。とうもろこしはこの房1本1本が実の粒になりますから念入りにお願いします。すべてを撫でたら周囲の房にもくっつけます。」
「これを全部か?」
「全部です。撫で終わった雄蕊は集めますので、かごにいれるように」
みんなで作業に取り掛かった。いくつかの雄蕊はまだのようで、残ったままになっている。
通常は、密集しているので、風で飛んだり揺れて落ちたりすることで実るので外周の手入れぐらいでいいけれど、今は種が少ないからしっかりと間隔が空いていた。
人工授粉させたほうが安心だ。それに実がつく条件を知っておくと今後実らなかった時にも理由がわかるようになる。
「ありがとうございます。それではこちらへ、この10本は一番最初に植えたもので違う品種になります。甘く大きく育てるときはよく育ちそうな2本から3本を残して、それ以外を取り除きます。」
「はぁ」
「このように取り外してください」
「うわぁもったいない。」
「本当にとるんで?」
「そうです。形の良い物を2~3本残して他は取ってください。」
目の前にはヤングコーンが20数本に集まっていた。皮を剥いてしまうと1/3くらいの小さなコーンが顔を出した。
「今日は、食事の用意はしないけど、これを持って帰って食べてください。ヤングコーンは輪切りにしてスープで煮るといいですよ。」
研修生1人当たりングコーン3本と麦をスプーン1杯分、それにスープ原液バーを1本渡した。持ち帰れば家族で食べることができる。
隆二は研修生たちを帰すとヤングコーンを塩茹でした。それにスクランブルエッグとプランターのレタス、ロールパンの食事を用意した。
「こんなに小さいコーンはじめて」
「いままでたまに間引きはしたけど、コーンはしたことがなかった気がする。」
「そうなのか?」
「うん、これも初めて食べるけどシャキシャキしておいしい。」
「そうだな、この歯ざわりは今だけの育てたものの特権だね。」
コーンを剥いた皮はロバも食べないので、ゴミ箱へ入れる。ゴミ箱といっても草しか入っていないので、空いている場所で燃やせばいいし、ロバの糞と混ぜて放置し、堆肥にしてもいいだろう。
隆二は、肥料づくりの実験のために倉庫へと籠った。
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