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その日は、シアンさんが商品の入った籠を持ってきて、昨日と同じように私たちに売ってくれた。
買った商品をロッカーに仕舞い、水浴びに向かう。
「これが洗濯場!?広いわね」
「水の流れも穏やかで、水浴びにぴったり!」
水を浴び、濡れた体にタオルに石鹸をつけてこすった。泡立つはずなのに、泡が立たないけれど、汚れは取れる。
「そうだ、頭も洗うといいって言っていたわ」
「目に入ると痛いから盥の水を用意してって」
「汲んできます」
ユリナが水を汲んでくれたので、ヒトエは試しに頭に石鹸をつけてよく洗った。最初は泡が立つと思ったけれどあっという間に消えてしまう。それでも教えられたとおりに頭を揉みこむように洗った。
「水をかけましょうか」
「うん、お願い。」
「あっ痛い…」
盥の水を掛けてもらったが、目を開けると痛い。ユリナがもう一度水を汲んできてくれた。それで手にすくった水で目をぱちぱちとしてからもう一度水をかけてもらう。
「大丈夫ですか?」
「うん、あとは向こうで流してくる。」
ヒトエは水槽に潜って目をぱちぱちとさせた。頭まで潜ったので髪の石鹸も完全に流れ落ちる。
「ごめんね。次はユリナを洗おう。」
「ちょっとこわいかも」
「大丈夫だって、目を開けないで2杯はかぶった方がいいかも」
「やってみます」
ヒトエも頭を洗う。
それを見て、数人は同じように頭を洗った。
10人ともが体を洗うためには使ったので、石鹸は使い終わってしまった。
タオルを洗い、それで体も頭も拭いて、もう一度タオルを洗った。
「このタオルって水を吸いますね。」
「本当だね。これはいいものだわ。」
「これも服も2枚ずつ用意してくれているし…」
「うちの雇い主はお金持ちで良かったじゃないか。私たちによくしてくれるんだ。」
水浴びを終えて、タオルを干しに工場へ戻った。その頃には髪も乾き始めていて、石鹸で洗った髪がサラサラになっていた。
「ちょっとあんたの髪」
「石鹸ってすごい」
「サラサラじゃない。あー失敗した。私も洗えばよかった。」
洗わなかった人たちが悔しがっていた。
数日後、リュウジさんへ日曜日に脱水機を貸してもらえないかと相談した。理由を聞かれて答えると、なるほどねと笑っていた。
日曜日、ヒトエは家族分の洗濯物を持って洗濯場へ向かった。
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