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「今日から、ここで水浴びをして帰るといいでしょう。水浴びをするときにこの水槽に入っても構いませんよ。」
「いいの?」
「ええ、水流を穏やかにするために作っただけですので、汚さなければつかってくれてかまいませんよ。」
「わぁ」
「あと石鹸に興味があるなら、これを皆さんで使ってみてください。これが体を洗う石鹸です。濡らしてこうやってくるくるすると泡がつくのでこれで頭や体を洗います。皆さんに用意したタオルは毎日自分で洗ってもらうので、体を洗うのに使って濯いでくれてもいいですよ。」
「え?そうなの?」
「ええ、タオルは構いません。その代わり、一度戻ってロッカー室に干して帰るようにしてください。失くしたら弁償してもらいます。」
「はい、わかりました。」
ヒトエとユリナと工場へと戻る。
工場の外回りで庭に出て、洗濯物を干してもらう。
庭はあっという間に洗濯物で覆い尽くされた。
庭に面した戸にはガラスが填められている。これは元々そうだったので、これを建てた人はかなり裕福だったのだろう。
「わぁ…いい匂い…」
「洗剤の香りだな」
「洗剤っていい匂いですね」
「さあ、お二人にはこれから昼食を作ってもらいます。」
「はい」
「こちらへ」
リュウジさんと台所へ向かった。
手つきの籠がひとつあった。
「洗濯に行ったら、帰りにギルドによってこの籠を受け取ってください。」
「は…い」
「棚のここに塩があります。これは小屋の鍵で開きます。」
「はい」
塩は、昨日もらったものと同じサラサラとしたもので、鍵をかけるのもわかる。その隣には、茶色い棒の入った入れ物があった。
「では、ユリナさんこの壺の中身を鍋に開けて水を少し入れてこのようにこすって水で白い液を流してください。米は流さないように気を付けて」
「はい」
ユリナが作業を与えられた。
「ヒトエさんは、野菜を洗って小さく切ってください。」
「はい」
野菜を受け取り、水樽の水で洗った。
一度洗っていたようで、汚れはないようだ。
「これを使ってください。」
塩などが入っていた棚から包丁を取り出し渡された。
カバーを外すと見たことのない美しい刃で、小松菜の根本がさくっと切れる。
「えっ…」
「よく切れるので気を付けてください。」
「はい、これは素晴らしい包丁ですね。こんなに切れるものは初めて使います。」
「そうですか、よく切れるので切りものも洗うのも気を付けてください。」
「はい」
「切ったら、粥が炊けるまでそのまままな板に置いておきましょう」
米というものと鍋の内側の線まで水が入っていた。
蓋を少しずらしてある。
「そろそろ沸きますね。噴きあがってしまうので蓋を外しましょう」
「10分ほど煮たら、火から下ろして蓋をしておきます。薬缶に半分ほど水を入れて沸かしましょう」
「はい。今入っているのは飲んでしまっていいですか?」
「どうぞ」
ヒトエは、コップをトレーに並べ、入っている水を均等に分けた。昨日の湯冷ましを捨てることはない。
新たに水を汲んでおく。
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