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コエは、隆二にすすめられて商売を始めてみると、夢がもてた。
商売には想像以上にお金はかかったけれど、元手はリュウジさんが用意してくれたし、リリアさんと相談しながらなんとかやっていけそうだ。
このまま続ければ、娘に服を買ってやれそうだった。
自分の服は結婚の時に両親が3枚も用意してくれた。古着だったけれど、それまで着ていた服とは違うしっかりとした物でとてもうれしかった。
夫も結婚の時に同じように服を3枚持ってきた。その後、立て続けに親たちがなくなり、娘が生まれてすぐに夫が亡くなってしまった。
そうなると最初に夫の服を1枚売り、それで食べ物を求め…夫の服は食べ物になり、私の服も2枚は売ってしまい娘に2枚買ったらそれ以上にはならなかった。
必死に働いても食べ物をなんとか少量手に入れるのが精いっぱいだったが、リュウジさんに出会って、食べ物には不自由しなくなった。とても立派な仕事着は貸してくれていたから、服も娘の分さえあればどうにかできる。そう思っていた。
そこから抜け出す足がかりが見えたのだ。今は頑張るしかない。
コエは、翌週も同様に働くと水曜日には267枚の小銀貨が手元にあった。
木曜日から土曜日の屋台代と場所代は支払ってある。今週必要なのは、毎日のスープの具に40枚だ。180枚残る。
コエは、ギルドの小部屋を借りて数えていた。
先週より足りない…あっ先週はリュウジさんが3日分の食糧をくれたのだった。
ノック音に考えるのを中断して部屋をあけると、リリアさんが立っていた。
「コエさん、少しよろしいですか?」
「はい」
リリアさんは、テーブルの上のトレーを見てほほ笑んだ。
「コエさん、悩んでいましたか?」
「ええ…先週ほど余りがなくて…来週どうしようかなって…」
「コエさん、今日中に注文しなくてはなりませんが、今お持ちの材料で土曜日まで営業できますよね?」
「え?はい…」
「私が手を出してもよろしいですか?」
「はい」
「コエさんは毎日小銀貨150枚と少し稼いでいますね。」
「はい」
「それであれば、少なく見積もっても150枚は稼ぎがあるはずです。これ1個を小銀貨10枚分と考えて…」
リリアさんは、木の四角い物を置いていく。
「これで15個ですから1日分です。木曜日分はこれで終わりです。次に金曜日…」
リリアさんはそうやって三日分の木を置いた。
「この木の下には小銀貨が並んでいると思ってください。ただし、お支払いは金曜日ですので、こちらの15個土曜日分は引きます。」
「そうすると…480枚になるので、米を4袋で小銀貨50枚を4回…」
リリアさんが出してくれた小さなかごに、木5個を4回入れた。
「塩で40枚とスープ原液バー2組だから40枚が2回…」
木を先にかごに入れていく、足りない分はコインを入れていくとやはり今週も屋台代と場所代が足りない。
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