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文字数2,000を超えてしまいました。少し長めです。
コエは、月曜日から3日間必死に働いた。
リュウジが、急に独立するように言ってきたのだ。
資金も何もないのに、と思ったがリュウジさんは商品の粥とスープの作り方を教えてくれた。そして最終日の売り上げの利益を現金でくれた。
商売とはどういうものかをその現金を使って見せてくれたのだ。
あんなにいい人と出会えた自分は幸福だと思う。
1日の売り上げ480枚を均等にした小銀貨160枚ずつを私たちに渡された。それは、私たち庶民にはとんでもない大金で見たことのないお金だった。
そこから屋台の借り賃として20枚、場所代として20枚、というように掛かる経費を差し引いていくと小銀貨26枚が残った。
リュウジさんは、その小銀貨26枚を現金でくれた。その上、屋台を3日間分の借り賃を支払ってくれた。それからギルドへの加入申請などの手続きもしてくれていてすぐに商売をできるように取り計らってくれていた。
さらにすごいのは、米2㎏と塩、スープ原液のバーまで分けてくれ3日間だけギルドへスープ用の野菜まで届けてくれた。
教わったやり方で屋台の準備をし、粥とスープを作った。ギルドで警備を雇い屋台を開いた。屋台の場所は、3か所あるので3人が交代で1日ずつ移動していった。
場所により客層も混む時間も変わるというのがわかった。
その結果、3人の希望は重ならなかったので、配置場所を決めることが出来た
それに…初日に粥76杯とスープ80杯、翌日に粥74杯とスープ80杯、そして今日は粥77杯とスープ80杯を売った。
昨日の段階で売り上げ小銀貨310枚を売り上げ、警備に小銀貨20枚を支払い、薪に小銀貨6枚を支払った。284枚も残っていた。
これなら商売をしていけると思い、リリアさんに木曜日から使う食材の注文をした。
米2㎏、塩1壺、スープ原液バー1組で小銀貨130枚になる。木曜日に蕪を5つで小銀貨10枚、金曜日に小松菜15で小銀貨10枚、合わせて小銀貨150枚だ。
それを支払い160枚が残っている。
さらに木曜日と金曜日の屋台と場所代、それに薪を買うと小銀貨44枚もかかる。
そうなると残りは116枚だが、警備2日で20枚差し引くので残り96枚。意外と減ったけれど、雇われていては絶対に目にすることのない稼ぎだ。ひと月分以上の稼ぎに隆二さんに感謝した。思わず拝んでしまう。
これを続けていけば、娘にもマシな服を着せてやれるだろう。
残り96枚に今日の売上げ157枚が加わって警備に小銀貨10枚支払うと243枚になる。
今日の帰りにリリアさんへ注文を伝えないと来週の食材は届かなくなってしまう。
米2㎏で小銀貨50枚だから2袋買うと100枚、塩が40枚、スープ原液2組で80枚、これで220枚だから残り23枚しかない。スープの具になる蕪と小松菜を毎日交代で小銀貨20枚分ずつ注文すると全然足りないけど、野菜の支払いは当日でいい。月曜の20枚は用意出来ている。月曜の稼ぎから残りは支払えるはずだ。
あっだめだ。屋台代と場所代、その他にもいろいろあるから足りていない。
だったら…スープ原液1組にして今週は残り2回だから6本3回分は余るはずだから足りるだろう。それで小銀貨40枚余るからこれで場所代と屋台代1日分になる。それでは4日分が足りない。
米は今週の注文で1回分余るが…それでも1袋では4日しか営業できなくなる。
う~ん…営業の機会を逃したくない。粥がないと客が来るとは思えないし…。
火曜日以降の場所代と屋台代の支払いは月曜でもよいか聞いてみよう。だめだったら、諦めて4日の営業にする。
待ってくれるなら6日の営業にしようと決めた。
計算のできないコエは、隆二が教えた通りにお金をトレーに10枚ずつならべ、そこから支払う金額を別の袋に入れる形で数えていた。そのため、買うか買わないか悩むときにも実際に小銀貨を動かしていたのだ。
このやり方は、はっきりと目の前にあるのでわかりやすい。
さらに、隆二は米などの食材、屋台や場所代とわかるように絵を描いた小さな板もくれた。コエはその絵を見ながら相当の枚数を袋へ入れていったが、他の二人は枚数を重ねてその板へのせて数えていた。
計算を終えると、コエはギルドに借りたロッカーへ食材の残りを仕舞った。それからリリアに屋台代と場所代の相談をした。月曜の夜でよいと返事をもらえたので、注文と合わせてリリアに代金を預けてしまう。そうすると、リリアは預かり証というものをくれるので、それをもって月曜の朝、荷物と交換するのだ。
リリアは、明日使う預かり証と、月曜日に使う預かり証を確認してロッカーの鍵をかけた。それから鍋の残りをかき集めたものをカップに入れてあるので、それを持ち帰った。
家に帰ると娘が駆け寄ってくる。つい1か月前まではベッドから起き上がることもできずにいたのに、毎日持ちかえる粥とスープを食べさせて回復したのだ。
自分の売っていた粥やスープには、枯れ死病から回復させる力がある。
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