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シドは作業をしながらいろいろと聞いてくる。
同じことを何度も言う事もあった。どうにも納得できていない部分が多いのだろう。
「この耕作機は素晴らしいな。これを引いて2回土を耕して、厠の土・・・肥料と灰を乗せて隙間から勝手に落ちて混ぜ込むことまでできるなんて、鍬で耕すより早くできる。」
「そうですが、石などは人の手で取り除くしかありませんし、畝も人力ですので」
「そんなことは当たり前だ。ヒロと2人で136aの畑を耕しているが、毎日3時間くらいを1週間で耕せると思わないだろ?鍬で耕していれば朝から晩まで耕しても2週間以上はかかる。」
「できていますよ?」
「そうだけどよ…」
「ロバに引かせるともっと早いのですが、ロバはお腹が大きくてできないので」
「は?そんなこともできるのか?」
「ええそれだと2日くらいでできると思います。」
「それは早いな…」
「どちらにしても肥料をやって2週間くらいはそのまま置いて栄養が行き渡るのを待ちます。蒔いてすぐに植えると、根が育たないので注意してください。」
「2週間は何も植えられないのか?」
「そうです。」
「わかった。気を付ける。それでここには何を植えるつもりだ?」
「そうですねぇ…向こうの小さい方は、小松菜と蕪を毎週月曜日に植えていこうと思います。」
「毎週?」
「はい、一度に植えると一気に出来上がるので出荷時期をずらすために1週間ずつずらします。今もそうでしょう?後は、ミニトマトも植えましょう。」
「なるほど聞いたことのない野菜だな…」
「こっちはそうですね…南瓜を植えましょう。半分南瓜で、もう半分はじゃがいもです。」
「南瓜が何かわからないが…じゃがいも?種芋があるのか?」
「まあ、あります。」
「それなら…5番を耕したら何を植えるつもりだ?」
「あちらはそうですね…手持ちを考えると、大豆かな?」
「大豆?持っているのか?」
「はい、ここは何年も放置されていたと聞いているので、今年大豆を植えて土を肥えさせれば来年には小麦を播けます。」
「それは本当か?」
「はい」
「それなら、こっちもそうすれば。」
「こちらは芋を収穫したら大豆を植えます。春に豆を収穫して麦を植えられればいいと思いますよ。」
「そんなことが出来たら素晴らしいが…そんな奇跡みたいなこと…」
「やってみましょう。少なくても今のところ1番から3番までは育っていますので」
「そうだな…そうだ。やってみよう…こっちだって上手くいくはずだ。」
隆二との会話でセドは希望が膨らんでいく。
「それにしても…この草はロバの餌にするなんてもったいないような…」
「そうですか?」
「今まで、俺たちはこういった草で食いつないで来たのさ…」
「これで?」
「草がなくて、木の皮を削ったこともある。本当に食べ物がなくて…」
隆二から見たらただの雑草だ。食べても美味しくないはずだけど…いや、違うか…そういうレベルの話ではない。食べられるものであればなんでもいいのだろう。
そうしなければ生きてこられなかった。
そういうことだ。
「これはごめん、ロバに仔を産ませて畑を手伝わせたいから…」
「もちろん、わかっているよ。労力は必要だからな…」
隆二は、なんとも言えない気分になってしまっていた。
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