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隆二はマイスマホの『評価』を見ていた。
最大MP数が7604MPまで上がっていた。6時間で2000MP戻る計算になる。毎朝1袋だった米を2袋に増やした。
シドは毎日、朝からやってくる。
一緒に野菜の手入れをし、週の初めに小松菜と蕪の種を蒔く。それから、昼までは4番の畑を耕していた。土揚げ機も置いているので、元厠後の土を掘ることも教えた。
半信半疑のようだが、他の畑で作物が育っているのを見ているので、信じてもらうしかない。実際は、ロバに引かせる耕作機をヒロと二人で引いてもらい、ロティと土堀をする振りをして、実際はインベントリを使い木箱へ土を移していたが動きとしては同じだ。
「こういった結晶があったら、壺にでも入れで分けてください。」
「それは?」
「硝石です。」
天然硝石は、長い時間をかけて糞尿から出来上がるものだ。白川郷などでは、蚕の分に灰汁を入れて人工的に作っていたらしい。
硝石は、火薬の原料になるので江戸時代にはごく限られた場所で製造され、その製法も秘匿されていたらしい。
「それは何にするんだ?」
「いろいろとできますよ。肥料にもなるので入ったままでもいいのですが、肥料には多すぎますね。あかぎれなどが出来たら、これを少しお湯に溶かしてそこに手を付けてから脂をしみこませると治りやすくなります。」
「へぇ…そうなのか」
「ええ」
尿素入りのクリームは肌荒れに効果的だけど、クリームなんてないだろうから適当に言っておく。
「そんな治し方があっても油なんてそうそう手にはいらねえな」
「そうですよね…」
「だが、そんな厠の土をまくだけで野菜が作れるようになるとは信じられんな。」
「そういわれても…そうやってできていますので」
「そうだが、やはり信じられん」
「もちろん、それだけではだめですよ。麦が植えられたところには3年は麦を植えられません。」
「は?え?どういうことだ?麦は麦畑に植えるもんだろ?」
「違います。畑は毎年作物を変えます。こうやって変えていくことで同じ栄養素が減るのを防ぎ、特定の栄養素を増やすことができます。」
「栄養素ってなんだ?」
「人間の食事のようなものです。栄養がないと死んでしまうでしょう。」
「食事が栄養か?」
「そうです」
「なら、枯れ死病は?」
「栄養失調ですね。食事を食べれば治るはずです。」
「そんな…じゃあなぜ、あの薬で治ったんだ?」
「あれは…食事に入っている栄養素を強くしたものです。枯れ死病はとても栄養が不足しているので、普通に食事をしても補えません。強化したビタミン・ミネラルと炭水化物を与え、タンパク質や脂質・炭水化物を与えます。それで起き上がれるようになったら食べてもらえられば…」
「難しくてよくわからないが…だから、あの神薬で起き上がれて、食べられて…粥を食べられるようになったのか」
「大げさです。あれはただの食べ物ですが…まぁ、そんな感じです。」
「それと、畑も同じだと?それで畑の神薬が厠の土なのか?」
「そうです。他にも草木灰と言って、草を燃やした灰、台所の竈の灰で構いませんので一緒にまきます。実が付き始めたらまた灰をまきますので、竈の灰は取っておいてください。」
「わかった…いつも捨てていたものなのに、そんな価値があったなんて」
「洗い物に使うと汚れは落ちますし、灰はとても万能ですよ。」
シドはいろいろと言ってくるし聞いてくる。時には否定的な言葉も出るが、言われた通りにはやってくれるのだ。実際にやってもらい、結果を見てもらうしか方法がない。
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