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「これは、ふつうより少しだけ栄養に優れたものなので、本当は普段から飲んでもいいものです。」
「でも、これは高いって」
「そうですね、小銀貨3枚でコップ1杯分のバーが買えます。8本で買うとお買い得で銀貨2枚になります。」
「へぇ」
「粥とスープの方がお腹は膨らむので、どちらがどうとは言いません。ですが皆さんが作るのは、これを作る材料のひとつです。」
「へ~」
「これは口に入るものですから、髪の毛が入っていたら大変なことになります。そして、清潔でなければなりません。ですからここに入るときには特別な恰好をしてもらうのです。」
「はい、わかりました。」
「では、実際に作業をやって見せますので、椅子を壁際へ運びコップを下げてください。作業台を拭きましょう。」
シアンが作業台を拭いていると、女性たちが台ふきに驚いていた。
「私の服より上等な布で…」
「ほら、高級な食べ物を作るから」
「それを言ったら、今着ているものだって…」
女性たちの声は、隆二がチラ見すると収まった。
シアンがまな板と包丁を用意した。
「この包丁はよく切れるので気を付けて扱ってください。」
「では、やって見せます。今日のクラゲは青いリボンですから、青がついた枠を使います。」
シアンは桶のリボンと枠の青を見せた。それから小さな洗面器ほどの桶に入っているスライムをまな板へ移した。
こうやって見ると、本当にクラゲのように見える。
それを包丁で小さく刻み、ある程度の量になったら枠に入れて見せる。枠の下にはトレーがあり、出てきた水分を受け止める。
「このように刻んで、枠が全部埋まったら2階へ運んで専用の台へおいて乾かします。2階へ行きましょう。」
「ここが最初に置いておく場所です。ここに並べておき、翌日の帰りにこちらの棚へ差し込んでおきます。上から順にいれていきます。1日に棚はひとつです。」
「はい」
「月・水・金と火・木・土で部屋も材料も変わりますので気を付けて作業をしてください。」
「はい」
「では、下に降りましょう。」
「材料をすべて刻み干したら片付けをします。こちらのまな板と包丁を洗うのでシンクへ行きましょう。」
シアンがスポンジに洗剤を一滴たらした。
「このようにスポンジを濡らしてこれを1滴垂らします。このようにまな板は裏表、横もこすります。次に包丁を洗うときは必ず包丁の背側からこのようにスポンジで挟んでこすります。怖ければおいてこすってもいいですが、手を切らないように気を付けてください。けがをしたらすぐに手当てをします。それと、けがが治るまでは別の仕事をしてもらいます。」
「はい」
「では、洗ったらここに乗せて乾かします。包丁は少しおいて乾いたらカバーに入れて引き出しに入れます。」
「はい」
「作業分担としては…」
隆二は、ロッカールーム前の壁に取り付けた板の前に立っていた。
板には枠があり、上下に4分割されていた。仕切りには板が張られている。そのすぐ下に釘が打たれているが、仕切り板からすぐ近くであり、頭は仕切り板より低くしてあった。
転んでぶつかってもケガをしにくいようにとの配慮だ。
「ここの仕切り板の下が作業をする人です。ご自分の名前の文字だけは覚えましょう。」
「はい!」
「今お手元にお名前を書いた物を渡しました。それと同じ物を探してくださいね。」
「はい!」
自分の名前の札を受け取って、うれしいらしい。「こうやって書くんだね」なんて声があちこちから聞こえてくる。
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