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「これすごい、紐で縛るより簡単に結わえられるよ。」
「ああ、本当だ。」
「誰か私の髪を結ってよ」
ワイワイ騒ぎながら髪を縛る女性たちだ。隆二とシアンは、彼女たちが髪を結い終わるのを待つ。
なれない作業なので、時間がかかる。
「いいですか、髪を結いあげて着替えるまでが仕事前の準備になります。それでは、中に入ったらロッカーを開けて中の服に着替えてください。下は短めのズボンです。着替えをしたらロッカーの部屋の奥の扉を入ってください。」
「うん」
「わかった。」
「今日から、返事は「はい」にしましょう。そのうえで、分かった。わからないなど教えてください。」
「はい!」
隆二とシアンは一足先に元居間だった場所へ移動した。頭にはタオルを巻き、マスクもつける。
他の部屋もつぶして柱だけにしているので、ここだけで12畳ほどの広さがあった。それとは別に竈のスペースが4.5畳ほどあった。
「では皆さん、今からタオルを配るので頭に巻いてください。次からはそれを巻いてマスクをつけてからこちらの部屋に来ることになります。」
「はい、わかりました。」
「みなさんいいお返事です。」
「こちらに入ったら、まずはここで手を洗います。洗い方ですが一度手を濡らして、この道具を一度押します。中からせっけん液が出てくるのでこのように洗ってから水で流します。」
「あの…そのさっきもだけど魔法のように水が出ているのは…」
「ああ、ここを踏んでください。それで水が出ます。もし樽の水がなくなったら、下してこちらの予備を横にずらしてここにこれをひっかけるようにしてください。」
「はぁ…」
女性たちが順番に手を洗うのを見ていた。皆、慣れていないのでかなり適当な手洗いだ。水で流す前にもう少しこするように言った。
「今日は、作業をする前に少しお話をしましょう。椅子があるので座ってください。」
作業台は長さ2.5m幅1.5mの物を2台用意していた。
5人ずつテーブルに着いた。
そこにシアンがカスタードバーを溶かした液体の入ったカップを運んでくる。
このまま作業させても倒れると思ったのだ。椅子はカウンター仕様で高めの座面になっている。座ったままでも作業はできるが、まずは食事替わりに飲んでもらおう。
「それを飲んでみてください。うちの自慢の商品です。マスクは外して台においていいですよ。」
「おいしい!」
「この味知っている…」
「あっ…」
「それは枯れ死病の薬を飲んで、目覚めた時に飲むものです。」
隆二の言葉にどよっと声が上がる。
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