16 出発
隆二は、森の泉で現状できる限りの確認と把握をした。
空のバナの葉容器に水を補充すると、マップを開く。
「一番近い村で様子を見よう」
スマホを車のフォルダーへセットした。一番近いスタータンを目指して車を走らせた。
スタータンはこの小川沿いに走っていれば到着できるはず。森を抜け、ガタガタの土の道を進んだ。
「きつっ」
尻も顎も痛くなってきたので、休憩をとる。道沿いに大きな木が立っていたので、その裏側へ車を寄せた。
がたがた道過ぎて、振動がきつすぎた。アスファルト舗装の道路とはまったく異なる道に違う世界だと改めて自覚していた。
スプリングが入っていて、尻には厚めのシートクッションも敷いていた。それでも抑えられない我慢できないほどの揺れに戸惑っていた。
「どうにかならないものかな…」
運転席周辺を見回した。
なんとなく、幼い頃見ていたヒーロー物の正義の味方の乗り物のように、何かの機能がないだろうか?と思ってのことだ。
「ステルス」「衝撃吸収」
おぉ!?
2つのボタンがハンドル左側のフロントボードにあった。隆二は早速「ステルス」を押して、車の外に出てみる。ドアを開けているので、内側は見えるが、他の部言えないので、空間の中に突如車の室内が見えるようなものだ。
手探りで運転席のドアを閉めると全く見えなくなった。
「おぉぉぉ!すげーさすが異世界!」
これなら、何かあっても隠れることができる。
強い風が吹き、舞った葉が中で止まった。車の上に乗ったらしい。なるほど車があることは変わらないからこうなってしまうのか。たくさんのものが舞い上がるような場所では隠れられないらしい。
機能がわかってよかった。
隆二は、MPを確認しながら、ステルスと衝撃吸収を使ってみる。
その結果、ステルス5MP/分、衝撃吸収10MP/分だとわかった。
朝食を摂った時は5000MPで、残りMPは3,500程度。安全を考慮して2,000MPくらいまでは使ってもいいだろう。
ステルスのみなら最大で400分6時間少々は使える。
衝撃吸収のみで200分だから3時間程度だ。
両方合わせると、133分で2時間程度か…。
衝撃吸収ありじゃないと走っていられない。走るだけなら衝撃吸収のみあればいいけど、1日2時間程度にしておかないと、何事かあったときにステルスを使えなくなってしまう。
ガタガタ道をよろよろと走っても時速10㎞程度なので衝撃吸収を使い60㎞から80㎞で進んだほうが、効率はいいだろうしなにより体によさそうだ。その代わり1日で進める距離は120㎞から160㎞くらいしかない。
そんなことを考えながら『箱』から総菜・ラーメンのコンテナを取り出した。ラーメンを食べるとコンテナが空になる。弁当のコンテナも空なので『箱』は2枠空いていた。
木の中でも重要そうな『冬木』と『夏木』を移した。
ドドド!!!
重い足音が近づいてくる。音の方へ眼を向けると、重装備の兵らしき人を乗せた馬が集団で走っていく。
しばらくしてから荷馬車が走っていくのは補給するための部隊なのだろう。
この国は戦争でもしているのだろうか?それとも領とかそういった小さい単位の戦いなのか?
よくわからないが、物騒なことと関わりたくない。
自分のスキルは、戦闘向けではないし、武器の一つも持っていない。何より、血など見ずに育っているのにそんな場面に出くわしたくはなかった。