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隆二は毎朝、畑仕事をしながら、蕪と小松菜の間引きをしていた。
不思議なほど順調に育っていた。
バケツの米は、水を張り様子を見ながら調整する。麦も黍もよく伸びていて、このまま収穫になったら結構な量になりそうだと期待してしまう。
新しく受け取った畑はまだ手付かずだった。
植えたところで手入れができない。ロバもお腹が大きいので耕作機を引かせられない。それならクローバーを植えて土を肥やすくらいしかできそうもない。
そう思いつつも手を出せずにいた。
角うさぎの雌は2羽とも腹が膨らんでいるので、別のゲージに移した。餌と水は毎日籠の外から補充しているが、2/3に暗幕替わりの布をかけてある。元は子供たちの服だったが、思い入れはないというので加工して使っていた。
もちろん、将来思い出したい時のために1枚ずつは残してある。シアンは残さなくていいというので、こちらも別のことに使わせてもらっている。
この世界で布は大変に貴重なものらしい。
子供たちとロティには、隆二がTシャツから下着まで全身分の服を3枚ずつ渡してあるので、不自由はないはずだ。
そろそろ…もうちょっとましな物を食べたい。
俺以外がコンビニ飯を食べるのは難しい。味が濃すぎる。
屋台は、個人にお任せにしたので自分たちの分だけでよくなった。粥が大鍋1つあるので、もうしばらくの間は朝食に食べるが、そのあとは炊飯をしてもいいだろう。
問題は、飯盒での炊き方は知っていても鍋で炊いたことがないことだ。
それと薪ではどうやっても火加減が難しい。
それでも、やはり炊き立てのご飯を食べたいと思ってしまうとどうにもならず炊いてみることにした。
キャベツクラブを見て、ピラフやパエリアから加熱時間は把握した。だが、それらと違うのは掻き混ぜたりしないところだろう。
まあいいか、沸騰させてから10分くらいで火からおろして蒸らせばなんとかなりそうだ。
隆二は、スマートウォッチを見ながらやってみる。
蒸らしている間に、冷凍の豚小間肉と小松菜を炒める。少量の醤油で味付けしみんなの分を盛り付けてから、自分の分の味付けを濃くした。
よくよく見ると、アイテムリストには生の肉も並んでいた。
それから、インスタントの味噌汁を作る。みんなは飲めるかわからないので1つを4等分にしてから3倍になるように湯で薄めた。自分の分はもちろんそのままだ。
それをテーブルに運び、ごはんを混ぜ少し食べてみる。柔らかめだが、悪くはない。それをカップに盛り付けるとザ・日本食の完成だ。深皿の半分にごはん、半分に炒め物を乗せた。
ロティと子供たちは見慣れない料理に集まってきていた。
子供たちには、以前パックごはんを食べさせているが、覚えているだろうか?
「これなあに?」
「ごはんとみそ汁、豚肉と蕪の炒め物だ。」
「ぶたにく?」
「ほら食べよう」
隆二当然のように箸を使いながら食べる。
みんなはスプーンだ。お粥に慣れていたので硬くないか心配になったが、食べているようだ。
「ごはん、おいしい…」
「このお肉は脂が甘くておいしいし獣臭くない…」
「うん、おいしいね」
シアンは何も言わずにバクバクと食べている。これはお代わりも必要だろう。
「ごはんなら、まだあるぞ。」
「たべる!!」
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