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「それに?」
「スライムを使うと賞味期限が伸びます。数時間で腐るものが1週間持つとかだけでもかなり助かりますよ。野菜だって遠くまで運べませんので、スライムで加工したものなら領内くらいはカバーできるかもしれない。」
「そうか…ははは。リュウジ殿は欲がないな。」
「欲深いですよ。時間が長くなる分多く売れます。」
「ははははは。まあ、よい。わかった。」
薬師殿が姿勢を正したので、隆二も姿勢を正した。
「ひとつ頼みがある。ギルドへ所属してもらうがわれらと同じ薬は作らないでもらえるだろうか?」
「それはもちろんです。薬師の方たちのような薬のレシピを知りませんから作りようもないです。」
「今日の礼として、登録料と今後10年の会費は不要である。その代わり、食品のバーを売ることを薬師ギルドは認めよう。」
「ありがとうございます。それで、ギルドに収める税はありますか?」
「うむ。通常のドロップや粉薬などの販売では薬師ギルドを通して薬草を得ることが多いゆえ免除される。だが、知っての通り直接取引もある。」
「売上の何割とかそういう決まりはありませんか?」
「そういったものはない。リュウジ殿の場合、仕入れは薬師ギルドではないであろうし…」
「では、そうですね。変わりに…ドライスライムや砂糖とか塩を収めるのはいかがですか?」
薬師殿の目が見開かれた。
そしてじっと隆二を見てくる。
隆二は、小さな砂糖壺と精製塩の壺を取り出した。
「これでよければ…多少収めることはできます。」
薬師はそれを手に取った。
「これはずいぶんと白く美しい。砂糖にこちらは塩か?」
「はい」
「これほど美しい真っ白な砂糖など見たことがない。これを収めると?」
「はい、年に1㎏ずつではいかがでしょうか?」
「この品質のものを毎年収めると?」
「はい、書面でいただけるのであれば。まとめて10年分の納品もします。毎年でもまとめてでもお好きな方を選んでください。」
「まとめて用意してもらいたい。書面は今すぐに用意しよう。少々待たれよ。いや砂糖と塩の用意もあるであろう。明日もう一度来てもらえるか?」
「はい、では明日お願いします。」
隆二は、家に帰るとすぐに木箱を出して水色スライムを移した。養殖しやすい2匹ずつに入れ替えると子供たちに食事を作る。
「リュウジさん、疲れているみたいだから寝たほうがいいよ。」
「うん、僕たちで片づけるから大丈夫だよ。」
「そうか?ならあと頼むよ。」
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