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それに…あれだけ大勢の人が見ている中でここに来ている。万が一のことがあれば、ヒイロの耳には届くはずだ。
「そうです。何か問題がありましたか?」
「薬師登録はしておらぬだろう?」
「はい」
「スライムの扱いも知らぬ者に教えたのはわしだが、なぜミルクセーキのレシピを知っておる?」
「ミルクセーキ?違いますよ。ミルクセーキと違って小麦粉も入っています。」
「!?」
「ですから、ミルクセーキではなくカスタードクリームです。」
「それは、ミルクセーキの作り方を知っていて、さらに小麦粉を入れたもののレシピもあるというのか…」
「何か問題でも?」
「ミルクセーキは、この国の帝王陛下の主席薬師に一子相伝口伝されてきたものだ。それを知っていてかつそれ以上のものを知っているのか?」
「そういわれましても…ミルクセーキは幼いころから母が作ってくれていましたし、カスタードクリームはいろいろな菓子で食べてきましたのでなじみ深いものでしか…」
「母!?しかも菓子!?」
目の前の薬師の顔色は青ざめていた。
口が震えているので、うまく話せないのだろう。
隆二は、リュックサックを開けて、中から出すふりをしてカスタードプリンと交換した。容器は無理だから、皿を出して、そこにさっと中身だけ出した。ひっくり返ったプリンだが、カラメルソースのないものなので、ただ白っぽい。
「これはカスタードプリンです。召し上がってください。」
薬師は恐る恐る、スプーンを差し込みひとすくい口へと入れる。
「なるほど…リュウジ殿、失礼した。確かにオリジナルのレシピをお持ちのようだ。」
「薬師殿、カスタードバーの販売に問題があるなら取り下げますよ。」
「いや…よい。ただ…争いを生まぬために薬師ギルドに登録はしてもらいたい。」
「わかりました。登録料などは?」
「それから、登録料などはわしが払うので気にしなくてよい。」
「いいのですか?」
「今後、作るつもりのこのドロップはあるのか?今売っている2種類以外ということだが」
「ドロップではなく、バーとして食べ物を売りたいです。」
「食べ物?」
「はい、穀物の入ったスープ。野菜が手に入ったら野菜の入ったスープ。肉が手に入ったら肉のスープなどです。あとはお芋がたくさん収穫出来たら芋のクリームもいいかもしれません。」
「つまり、薬草…薬のドロップではなく、食べ物を売りたいのか?」
「はい。食べ物をそのまま食べるのが一番ですが…量がいきわたる程にはなりません。それであれば、スライムを使い栄養価を上げて広く薄く行きわたらせたほうがいいかなと。それに…」
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