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 最初は胡散臭そうな視線を向けてきた薬師たちだったが、「リュウジ殿」と呼んできた。椅子を用意し、湯冷ましまで渡された。手のひらを反して手厚いもてなしに笑ってしまう。

 受け取った湯冷ましは少々不安なので、インベントリへ収納し、水筒の水と入れ替えた。



 「リリー、今のカップの詳細」

 『カップ(スライム水):スライムの水化したもの。アオマッペには栄養豊富。』

 「ん」



 なるほど、薬師たちは仕留めるのに失敗したスライムも有効利用しているのだろう。だが、隆二には抵抗がある。飲まなくてよかった。




 「うわっ」

 「リュウジ殿のようにできん。」

 「ささっと桶を持ち上げていたではないか、俺が変わろう。」



 休憩している間に、隆二の動きを見ていた薬師たちが釣瓶で捕まえようとし始めたが、なかなかうまくいかないようだ。

 インベントリを使わなくてもそこまで苦労して捕まえてはいなかったような…。



 「ちょっといいですか?」



 隆二が釣瓶を手にそっと桶を下した。水に沈ませ傾けるとスライムがポトンと入る。それを持ち上げた。



 「そっと優しく置いて、沈ませて中へ入れてください。先ほどまでと違い減ってきたので少し時間もかかるでしょう。」



 適当な言い訳をしておく。



 「なるほど、やってみてもよろしいですか?」

 「どうぞ」



 若い薬師が桶を落とす、勢いがあるので隆二が掴んでスピードを調節する。



 「このくらいゆっくりです。勢いがいいと叩き潰してしまいますよ。」

 「はい、すみません。」



 そこからは、スライムを捕まえる講習会となった。

 数が減って捕まえられなくなると、隆二が交代した。リリーが『対象なし』というまで作業を繰り返した。


 

 「もういないようですね?」

 「リュウジ殿、討伐の手伝い感謝する。薬師ギルドからの礼があるので来てもらえるか?」

 「いえ、そんな…通りかかっただけですから、お気になさらず。」

 「そうはいかぬ。」

 「いえ、本当に。」

 「そうか…では、これを受け取ってくれ。」

 


 出されたのは金袋だ。かなりずっしりとしているのは、受け取らなくても分かった。

 

 

 「え?」

 「これくらいでは礼にならぬが」

 「いえ、こんなにいただけません。」

 「では、薬師ギルドへ来てくれるな」

 「はぁ」



 仕方なく薬師ギルドへついていく。

 歴史ある建物なのだろう。石づくりのどっしりとした建物だった。

 暗い廊下を進み、通された部屋は上品だが高級だと一目でわかる調度品が設えられていた。

 ガッツ翁と2人になる。

 

 

 「リュウジ殿、少しお聞きしてもよろしいか?」

 「はい、なんでしょう?」

 「これをご存じか?」



 目の前に出されたのはカスタードバーだった。

 

 

 「カスタードバーですね。」

 「これを作ったのは、リュウジ殿か?」

 

 

 鋭い視線が怖い。薬師の真似事をしたと怒られるだろうか?いや、井戸での動きを見る限り厳しい師弟関係もありそうだ。それならば、犯罪者として裁かれるかもしれない。

 違うといったところで逃げられるものでもないだろう。

 周囲を見回した。槍などの武器になるような物は見当たらない。

 背中に冷たいものが走った。






読んでくださりありがとうございます。


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