150
「シュリー、リュウジさんはこの水筒は使ってくれてかまわないと寝言のようなことを言う。」
「は!?これをですか?これからもあの秘薬じゃなくてデカビタミンを用意するのに必要では?」
「この容器はなくても大丈…」
「リュウジさん、あのな…これが一般的な水筒だ。皮でできていて入れた水は獣臭くなる。旅人や軍隊でよく使っているのがこれだ。」
目の前に出されたのは、異世界ものでよくみる皮の水筒だ。いわれてみれば確かにそうだろう。
「そして、こっちが庶民も使う竹筒だ。獣臭はないがカビやすい。そして飲みにくい。水漏れも当然する。」
「それは、まあそうでしょう。」
「これは透明で軽い。そしてガラスと違って割れない。こんな素材は見たことがない。」
「それはそうでしょうね。」
「竹筒で4000ダル、小銀貨4枚だ。皮の水筒は10万ダル、大銀貨1枚以上だ。中の薬液が大銀貨3枚なんて格安で下ろしてくれているが、入れ物まで貰える価格じゃない。」
「わかりました。では、これは回収にします。」
「そうしてくれ。」
ヒイロとシュリーがほっとしたように笑った。
「ヒイロさん、この後うちの売り子さんたちと雇用条件について話すので、立ち会ってもらえますか?」
「ん?わかった。」
「それと口座を確認させてください。」
「わかった。入金記録も持ってこよう。」
「ありがとうございます。」
しばらくして運んできた入金記録には毎日1割に満たない程度多く販売していたらしい。聞いてはいたが、実際に数字の羅列を見ると驚く。
過去5週間で小銀貨25500枚になっていた24000枚の予定だったから1500枚も多い。銀貨にすると150枚相当になる。
隆二は、資金として十分だろうと思った。
「あの…お呼びだと聞きました。」
「うん、今日もありがとう。お疲れさまでした。」
「今日で終わりですか?」
「いや、違うよ。あれ?違わないかな?」
3人が不安そうに隆二を見ていた。
「まあ、そこに座って話をしよう。」
「はい」
「3人に働いてもらって予想よりも多い売り上げになっている。そこはありがたいと思うし、3人に還元したいと思う。」
「かんげん?」
「今週は今まで通りに働いてほしい。そして最後の日に食材を用意する。」
「食材?」
「そうだ。今まで売っていた商品の原料だ。材料も1日分ずつ3人へ用意する。売らずに自分の食糧とするかは好きにしていい。だが、売るのであれば、お粥の作り方とスープの作り方は教える。教わった上で、自分で料理して売るのなら、最初の3日分だけは屋台代は私が負担します。」
「それって…もう雇ってもらえないってこと?」
「違うよ。雇ってもいいのだけど、自分で商売したほうが儲かるし楽しい。粥やスープがよく売れるのは分かっただろう?」
「はい…」
「ギルドに警備を1人頼んでも十分にお金は残る。だけど、仕入れと屋台を借りるにもお金はかかるから仕入れをして、残ったお金が自分の取り分だ。」
「仕入れったって…」
「ギルドの貸し出し倉庫を借りるといい。そこに材料や道具を入れて置ける。それと、ギルドのリリアさんに伝言とお金を渡してくれたら、材料は月曜日と木曜日の2回届けるようにする。」
「本当に?」
「ただし、沢山は無理だよ。材料のままの販売は認めない。それを見つけたら売るのをやめる。」
「そんな」
「加工して粥や雑炊にして売ればいいことだからね。どうする?週末までに考えておいてください。」
読んでくださりありがとうございます。
評価をいただけると嬉しいです。