15 森の獣②
「へ!?」
MP0は死ぬのかよ。
今知れてよかった。
知らずに使い果たしていたかもしれないのだ。
昨日うっかり鰻まで食べてしまった。前の泉を出るときに4500くらいだったから、今は2000あるかどうかだろう。上限まであったとしても、命と引き換えだが、そもそも2000では解放できない。
夕べ見たはずの回復したMPをすっかり忘れている隆二だった。
つい、つぶやくように聞いてしまう。
「MPの上限値を増やす方法は?」
『MPを使うことです。どこまで使うかはお答えできません。』
使って回復しなければ、死へ一直線だ。回復方法も知らないとどうにもならないということか。
「MPの回復方法は?」
『お答えできません。』
「何かヒントくらい…」
『…今の主を確認してください。』
今の俺?
どういうことだ?
見た目?違うよな…あっステータスか。
そこにヒントがあるのか?
インベントリに入れたアイテムのように入れてからならタップで説明を読めた。『評価』にも同じようなものがある?
「リリー。マイスマホを右手に取り出して。」
反応がない?
あっそうか。インベントリを開いていなかった。
「リリー。マイスマホを右手に取り出して。」
『かしこまりにゃん♪』
隆二は、インベントリを開くともう一度指示を出してマイスマホを取り出し『評価』を開いた。
名前 加藤 隆二
年齢 28(18)
性別 男
HP 1500/1500
MP 5000/5000
言語 異世界言語(聞く)、異世界言語(話す)、異世界言語(読む)、異世界言語(書く)
家族 ---
スキル マイスマホ、コンビニ(宅配・車・スマホ)、電子レンジ
称号 世界を渡りし者
MPが5,000/5,000になっていた。
完全に戻っている!?
何か条件があるってことだよな。
昨日は、鰻弁当を食べて眠っただけだ。鰻で回復したのだろうか?それとも一緒に飲んでいたお茶か?それともその組み合わせに意味があるのか?
これは、じっくりと検証する必要がありそうだ。
隆二は、森の泉で数日過ごすことにした。その間、MP使用の都度、時間と行動・MPとHPを記録していった。
それだけでは暇なのでバナの葉で器を作った。
そこでいくつかのことが分かった。
・睡眠を8時間程度取れると一晩でMP・HPは完全回復する。
・MPは時間経過でも少しずつ戻っていく。
・時間経過だけでMPを完全回復しようとするとかなりの時間がかかりそう。
・食事や飲料ではMPは回復していない様子。するものが本当にないかはわからない。
・MPは残り250を切ると、1時間後には最大値が25増加していた。その後、一度完全回復させてから同様にすると最大値は増加する。数日で26になったので、固定数ではなく割合かもしれない。MP残値も割合の可能性あり。
隆二は、ノートに書きだして考えていた。
つまり、朝起きたら自動回復する程度のMPを使っていい。電子レンジやその他使うMPは残しておく。
夜寝る前に、MP残を240まで減らす。この数字は、MP増加で変わるかもしれない。様子を見ながら調整しよう。減らすためにはアイテムリストで交換するのだが、日持ちする食料か衣服を選びインベントリに収納する。『箱』は余裕がないので、これ以上は取捨選択をしなくてはならず躊躇する。
もうひとつわかったことがあった。インベントリへ入れた物の時間経過だ。
時間停止ではないものの、おそらく1/6になっている。6時間が1時間、1日24時間は4時間になっているのだ。
これで、インベントリへ入れたものにはかなりの時間的猶予ができることが分かった。
それから、ここに来るまでMPが回復しなかったのは、水のことを考えても神域にいたからなのだろう。神域は時間停止に近い何かの力が働いていたと考えるのが妥当な気がしていた。