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「リュウジさん、この間のデカビタミンの代金だが…」
「ああ、あれね?忘れても構わないのに…」
「そんなわけにはいかないだろう…」
「まあ…」
「ナナが赤子ミルクを買いに来ているだろう?親も持ち直して、すごく気にしていた。ナナは買いに来ているからわかっているが、あまり出所を教えたくないから俺の方で預かってきている。」
「うん、わかった。テーブルに置いておいてよ。」
隆二は、鍋をかき混ぜる手を止めるわけにもいかず、ロロナが連れてきたヒイロがそう言ってきた。
「それは難しいな。」
「どうして??」
「ここの隣の川側の土地だ。本来は水門もついているが、その管理は無理だろうからその周辺以外ということで書類を作った。」
「はぁ!?」
「向こうはめちゃくちゃ感謝している。」
「いや、ちょっと待って…」
「ただ、赤子のミルクをこれからも譲ってもらわなくてはならないし、いくら掛かるかもわからないっていうから、デカビタミンについては土地でどうだろう?と提案した。今回は権利付きになるが、リュウジさんなら何かに使えるだろう?」
「まあ…どうだろうね?」
「なぁ…あの薬、販売する気はないか?」
「ん~…あれは薬じゃないよ?」
「薬だ。うちの妻や息子もだが…あの透明な容器の中身を飲んだだけでかなり元気になった。あの白いのももちろん効果はあるだろうけど、あの透明なのだけでも…かなり希望が持てる。あの白いのは管理が難しいみたいだけど…」
「それだけど…ドロップ剤のようにして固めれば日持ちするって最近知ったのだけど…」
「そうだな…だが、ドロップ剤は高級な薬でそう手に入らない。」
「この間、屋台でカスタードバーを売ったのは知っているか?」
「ああ、それはなんだ?って思ったが、ロティだったから許可をした。」
「食べた?」
「いや、食べていない。」
「なら、食べてみてよ。この棒は端っこだから不格好だけど、同じだからね。これを適当に折ってカップに入れて、熱湯を注ぐ。少しおいてからスプーンでよく混ぜて。」
「ああ、滑らかな物になったぞ。」
「それで出来上がりだ。食べてみて。」
ヒイロはそれを食べて目を見開き、また食べる。
「これはすごいな…毎日リュウジさんの食事を食べている俺でも力が湧いてくる。」
「牛乳と卵、それに砂糖と少しだけど小麦粉が入っている。」
「それは…随分と豪勢な材料だな。」
「それと青スライムね。」
「それって…薬師のドロップと同じなのか?」
「違うよ。傷みやすい食材が多いから、普通のドロップのようには保たない。せいぜい3か月くらいかな?」
「十分に長期間だな。だが…ドロップ剤は煮溶かして使うものだったはずでは?」
「これは、薬師のドロップと違って…固める量が多すぎる。だから柔らかい。このまま食べて水を飲んでも膨れる。お湯でも簡単に戻るから煮込めなくても食べられて便利だろ?」
「便利だ。それならこれも一緒に売れば回復が早いってことだな?」
「そうだね。でも、そもそも食べられるようにならないと繰り返してしまう。」
「まあな…それは今考えても仕方がない。とにかく、あの薬とこのドロップを一緒に売ればいいのか?」
「そうだね…でもあれは…開封して容器に移して次の日までしか持たないからなぁ…」
「それは心配いらない。あの薬は10等分に分けて、その日飲む分ずつ売るつもりだ。」
「そうなの?」
「ああ、だから必要な分だけ買えるようにしたい。」
「なるほどね。」
「リュウジさん、こちらのカスタードバーはいくらだ?」
「これは小銀貨5枚で1本だね。」
「は?」
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