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隆二は、青スライムの加工をロティにお願いしていた。
隆二がスライムの核を抜き、安全な状態にする。それをロティが角切りにし、渡された笊の枠に入る分ずつ入れて枠を埋めていた。
笊は、陰干しして乾燥させる。ドライスライム青の製造だ。
週に2度、その作業を行うようになっていた。
隆二は、ある程度の仕事をロティと子供たちに任せてしまい、時間ができていた。
隆二はもう何度も角兎の捕獲を失敗している。今日こそ成功させようと改良した籠を持っていた森へ向かう。
何度も通い失敗し角兎の通り道は覚えた。
あとは籠に追い込めれば勝ちだろう。
隆二は、今回は最終手段とばかりにあるものを用意していた。それを使うと思った通り、角兎が籠に入った。入るのは簡単だが出られない仕掛けになっている。
籠を入れ替えて、結果3羽がかかっていた。
「リリー、この籠を収納して。」
『できないにゃん♪』
「え?」
「リリー、この籠を収納して。」
『できないにゃん♪』
角兎の入った籠をインベントリへ入れようとしたが入らない。
やはり生き物はだめだという制約でもあるのだろうか?そう思うものの車で運ぶにしても途中、籠を持ち歩かねばならず目立ってしまうだろう。
とりあえず角兎の籠を車へと乗せた。
「リリー、車を収納して。」
『かしこまりにゃん♪』
「おぉ…いけるのか…」
「リリー、車を目の前に出して。」
『かしこまりにゃん♪』
車の荷台を開けて角兎の様子を見るが、元気に動いている。
動いているというか、脱走しようと暴れていた。
うん、これなら持ち帰れそうだ。
空気量とかそういう兼ね合いだろうか?
隆二は、車に乗り込むと急いで町へ戻り、徒歩で門を通る。家まで急いで帰り倉庫の中で車を取り出し、角兎の入ったかごを取り出した。
籠は竹製なので、注文していた金属製のゲージができていないかと職人のもとへ訪ねた。
丁度できたというので、ロティの荷車へのせてもらい人の少ない場所でインベントリへと収納する。
ロバは、そろそろ腹がでかいので、荷台は人が引くタイプのものだ。
「ロティさん、仕事を増やしてしまったね。」
「かまいませんよ。リュウジさんのおかげでこうやって生活できていますからね。」
「俺は助かっている。午前中の仕事はほとんどロティさんがやってくれているから、俺は研究の時間が取れる。」
「楽しいですよ。リュウジさんがいろいろなものを作るので、それで町の人も元気になって来ている気がしています。」
「そうだといいけど…」
「最低でも毎日の粥とスープで生きている人は沢山います。」
「それはそうかもね。そういえば最近帰りが遅いけど、ロティさんは何をしているの?」
最近、ロティが帰ってくるのが少し遅いのだ。一緒に荷車を引きながら話をしていた。
「それはですね…アクセサリーを買っています。」
「え?売るんじゃなくて買うの?」
「はい、粥とスープの小屋の近くで、買取屋をしています。普通は物々交換に応じますが、雇われている彼女たちはそれができない。だけど、現金は持っていないけどアクセサリーを持っている人もいる。その人達は、昔は食べ物をそういった物と交換してきた人です。それを僕が買い取って、現金にしてあげるので結構喜ばれます。」
「なるほど、そういう稼ぎ方もあるのか?」
「今は手持ちの現金が減っていくので不安な部分はありますが、宝石をもっていて食べられないで死ぬなんてバカバカしい。彼らは食べることができ、僕は将来大金で売りさばく。お互いにウィンウィンの関係です。」
「それは、不安にならないのか?」
「不安ですか?少なくても今の畑を見れば、将来は明るく思えます。もう少ししたらあの野菜は売ることができるくらいになるはずです。」
「それは…なるだろうな」
「ですよね。だったら、不安なんてありません。」
あまりにも前向きに言い切るロティに笑ってしまう。
今のところ順調に育っている。それは確かだけど…この先も続くかはわからない。天気次第なのはここでも変わらないだろう。
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