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軒下に出しておいたじゃがいもの芽が出て植えどきになっていた。隆二は芽の様子を見ながら半分に切り、断面には灰を付けた。
そのじゃがいもは、2番の畑に植える。20袋くらい芋を買っていて、芽が出た芋を半分にしたことで種芋は200個くらいになっていた。
それをひとつずつヒロたちと少し話しながら畝一つに2列ずつ植えていく。これだけでも結構な重労働だ。土を耕してあっても植えるのは手作業で中腰での作業はきつい。
畝が半分以上も余ったので4本にはかぼちゃの種を植えた。そして、残りの畝はさつまいもの植え付けのためにそのままにしておく。
2番の水路向こう側の45aにも小麦の種籾に原種を加えたものを蒔いた。
さつまいもの弦もかなり伸びてきていたが、もう少し長くなるのを待つ。
1番の畑には、しっかりと水を吸わせた大豆を植えていた。
「リュウジ~これ抜いてもいい?」
「ああ、いいよ。今日の夕食にしようか?」
「わーい!」
ロロナは無邪気に蕪を抜く。小さい体のせいなのかバランスが悪いのかわからないが、1本抜くときに尻もちをついていた。
たった1本抜くだけなのに泥だらけになりながら笑っているのは、かわいくて癒される。
柵は50本出来上がっていたので、2番と3番の畑の道路側と隣家の間に巡らせ、残り10個はこの家の道路側に巡らせた。出入口の一か所だけ開けていた。残り30本が出来上がったら次は裏へ続く道をふさぐつもりだった。
「リュウジさん、赤子のミルクをください。」
ナナが銀貨を持って訪ねてきた。
「ナナさん、いらっしゃい。赤さんはどうだい?」
「はい、おかげ様でおおきくなってきました。」
「そいつはよかった。今用意するから少し待っていてくれ。そうだ、これ食べてごらん。のどに詰めないように気を付けてなめるんだよ。」
ナナに飴玉をひとつ渡した。
隆二はドアを閉めてから固形ミルクを4等分に割り、ナナが持ってきた瓶に入れて渡すと嬉しそうに笑って帰っていった。
ロティが来てからは朝からスープを作ってくれるので、その間に隆二たちは畑仕事をした。主に雑草取りで、取った雑草はロバの餌になった。
ロバの糞は、厠の一角に専用の穴を掘り、そこに入れてもらう。動物のフンは2年ほど熟成させると肥料として使えるので気長に待つ。
小麦は、家の道路側、2番の道路側、3番の道路側と合わせて110aの広さに蒔いていた。うまく受粉してくれることを祈るしかない。
最初の1畳の畑のとうもろこしの房が出てきた。上の雄蕊を見ると花粉が熟してきて飛散し始めていた。
隆二は雄蕊を外すと、それで無数に伸びている房を順に撫でていく。
「僕もやってみたい!」
「もちろんだ。こうやって花粉がつくようになったら受粉の時期だ。この房のひとつひとつがトウモロコシの実のひとつひとつだから、房のすべてに花粉がつくように撫でてごらん。」
ヒロとシアンが隆二の話を聞きながら、雄蕊を撫でつけていた。
これが失敗して実がつかないなんてよくあることだけど、それだけは避けたいので、念入りに行ってもらう。
まだ種をまいていない畝に、小松菜と蕪の種を1畝ずつ蒔いた。これは、毎週行っていくつもりだ。種まきから収穫まで短期間であり、野菜を安定的に市場に流すために行っていた。収穫まではまだしばらくかかるが、スープに蕪と小松菜を50個前後ずつ使用してもそれぞれ150個前後を毎週出荷できる。食べ物がない街の人にとって、それはかなり画期的なはずだ。
人口はそれなりにいるだろうから、すべてにいきわたらせるのは無理だが、隆二たちの畑が成功するなら、その農法を希望者に広げたいとも思った。
ヒロの言う小麦は小麦畑にというのが、本当ならばこれで収穫できるようになるはずだ。
輪作という概念も教えなくてはと思っていた。
畑の広さの単位にaという単位があります。10aは10m×10mです。
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