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 藁は、麦の原種を収穫した時のものだ。種籾を取り除いたので、ロバにいいだろうと思ったのだ。他にも黍の藁も混ざっていた。



 「いつでも移って来られるだろ?」

 「うん」

 「あっ…この部屋で過ごしてもいいかな?」

 「ん?いけど、寒いだろうから家のほうがおすすめだよ?」

 「もう暖かいから大丈夫だよ。リュウジさんがくれた毛布もある。」

 「う~ん…できれば家の中に居てほしいかな…危ないだろ?」

 


 畑に行くと、ヒロとシアンが駆け寄ってきてロティを歓迎してくれた。

 ロティが宿を引き払いに向かったので、一緒に歩く。ついでに女将に米を届けた。その帰りに、女将さんに紹介してもらった店でベッドを買い、衝立も買った。


 ロティのベッドを入れるので、2階に出していたスライムの箱はインベントリへ収納する。しばらくは余裕もないだろうと思ったのだ。



 「ロティさん、粥の作り方とスープの作り方を教える。それと、釜の使い方もだな。」

 「うん」

 「ロティ、腹が痛いとか下ってはいないか?そういう時にはここには入れないし、食べ物を売っても触ってもいけない。」

 「だいじょうぶだよ。」

 「それはよかった。こっちの小屋が、売り物用の厨房になる。入る時にこれを着て、頭にこれをこう結んで、口にはマスクを着けてくれ。」

 「うん…」

 「そうしたら、入ってすぐにあるここで手を洗う。こうやってここを押すと水が出るから水洗いしてから、石鹸を1回押してそれでよく洗い水で流す。」

 「う…ん、やってみる。」

 「それが出来たら、食材を触っていい。米はここにあって、釜はこれだ。」

 「うえっ!!でかいよ!」

 「うん、まとめて作るからね。少量なら、こっちの竈を使う。」

 「へぇ」

 「粥は、5日分まとめて作って、俺のアイテムバックに収納している。スープは物によるが、卵スープはまとめて作っている。他は材料がある時に作っているが、できるだけ当日作りたいと思っている。」

 「わかった。僕はお腹が痛くない限りは作ればいいのかな?」

 「ああ、それとロバで運べるようになるとさらにいいな。」

 「わかった。頑張るよ。」

 「この鍋だけど使い方としてはこうやって傾くから料理をするときは必ず固定すること。そうしないとお湯をかぶってしまう。」

 「それは危ないね。」

 「ああ、気を付けてくれ。それと…鍋に水を運ぶのは重労働だが、やるしかない。ここに水樽を台に乗せた物がいくつかある。台には車輪がついているから、こうやって動かして栓を抜けば水を入れられる。」 

 「へぇ便利だな…」

 「だろう?」

 「それで、ここに火をくべて粥が炊けるまで待つ。」

 「わかった。」

 「そんでその間は暇だからな。スープを作るんだが…今日はまずは説明をしよう。」

 

 「この回転釜では、一度に200Lの粥を炊く。火を強くしても炊き上がるまで1時間以上はかかるから火が消えないように気を付けてくれ。」

 「粥は5日分になるので、週に1回か2回炊くことになる。それを1日40L売っている。それとスープも同じ40Lだ。」

 「うん」

 「粥は、この鍋に入れてからこの特殊な蓋で閉める。そうするとガタガタさせてもこぼれたりしない。」

 「そんな蓋があるの!?」

 「特別製だよ。」

 「うっ」

 「この鍋は売り子たちが洗ってギルドへ届けてくれている。朝、ギルドへ彼女たちの報酬を預けるときに回収してくる。」

 「彼女たちの報酬?」

 「ああ、この入れ物に粥とスープをそれぞれ入れておくんだ。」

 「先によけておくのか?」

 「そういうことだ。粥とスープは、彼女たちの出勤する10時までに小屋へ入れられるといいのだが、ギリギリだと人が集まっている。それを避けるために9時を少し過ぎた時間には鍋を運び込むようにしている。」

 「なるほど」

 「その作業をロティさんがしてくれるなら、俺は畑仕事や他のことができて助かる。」

 「それなら生まれるまで日もある。しばらくはできそうだね。」

 「助かる。スープは、できるだけ当日の朝作りたい。気持ち多めに作って俺たちの朝食も兼ねる。もちろん、ある程度の作り置きはして寝坊に備えておく。」

 「わかった。スープを作るのはこっちの竈ってことで合っている?」

 「その通りだ。」

 「スープを作る時の水はこの当たりまで入れて火にかける。具はその時によるけれど、俺の持っている袋入りの野菜の時もあるし、畑の野菜の時もある。どちらにしても、1㎏くらいしか用意できないから、2つに分けること。それらを小さく刻むこと。青菜は最後に入れることくらいだ。味付けは鍋一つに対して、これを2つと塩をこのくらい入れてほしい。」

 「わかった。それならできそうだ。」

 「包丁とまな板はここにあるから、必ずスポンジと石鹸で洗ってから窓際に干してほしい。かびたりしないように気を付けて。」

 

 「それじゃあ一緒にやってみよう。今日は、俺の用意する野菜を使ってもらう。カボチャと玉ねぎだ。」

 

 取り出したのは、南瓜1/4カット3カットと玉ねぎを3玉だった。

 これを5㎜ほどの角切りにしていく。沸騰したところに入れて5分もすれば出来上がる。ロティに切ってもらっている間、隆二は種を洗っていた。これから畑に植えるのだ。先に植えた畝では、芽が育っていて蔓も伸びてきていた。

 家の近くの元厠のあった場所は広々と空いている。隆二が来てから厠を埋めて新しい場所へ移していた。これから植えようとしている場所も土を入れ替え済みだった。

 着々と土地は耕し、作物を植えつつあった。

 いくらインベントリへ収納できるといっても頼りすぎはよくない。

 ある程度は倉庫で保管できる野菜も用意していく予定だった。




 ロバ小屋を建てた後で、この厨房小屋を建ててもらっていた。

 週に3回のギルドでの粥売りは1度はやめて広場のみにしたが、商業ギルドへクレームが相次いだ。それで仕方なく、1人にギルドへ来てもらい新しい人をやとってギルドでの粥売りも継続していた。

 ギルドでの仕事をする人を3人雇い、コエさんたちから仕事を教わってもらった。

 1週間ほどで仕事ができるようになったため、コエさんたち3人には週に5日小屋で粥とスープを売りに戻ってもらっていた。

 粥だけではなく、スープもあり大変だと思うけれど彼女たちはよく働いてくれていた。




読んでくださりありがとうございます。


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