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「彼らはお金がないから装飾品で支払うと言ってきた。粥の時も宝飾品を持ってくる人はいたけどさ…宝飾品があっても腹は膨れないからね。今はこういったものの価値なんてあってないものだから、米1袋と宝飾品2つで交換してきた。」
「そりゃあ逞しいな。」
「僕の場合、リュウジさんが畑を変えてくれると信じているからね。食べ物が普及してきたらこういう物の価値も戻ってくる。それまではおいておくしかないけど、数年のことだと思っているから…。」
「そういうことか…それでこそロティさんだ。」
「でも、あの人たちは馬鹿だと思うよ。こんなことがあったら、もう行かなくなるのに…。」
「それは、それで仕方がない。自業自得だろう。」
「まぁ…そうだね。」
「おっお湯が沸いたから、ちょっと待っていて。」
隆二は薬缶を手に戻ってきた。湯冷ましは飲み干しているので、そこにティーバックを入れお湯を注いだ。
隆二は、緑茶のティーバックでお茶を軽く出し、それを置いてもう一つのカップに移した。一煎目をロロナに渡し、自分は二煎目を手にした。
「へぇ…親子みたいだな」
「そうだな。娘みたいでかわいいよ。」
隣に座るロロナの頭を撫でると、隆二を見上げて「えへへ」と笑う。やばいくらいかわいいのは、弱弱しい状態を知っていて、最近少し肉がついて子供らしくなってきたからだろう。
「楽しそうでよかった。」
ロティが、苦笑しているのは妻もいないのにと言いたいのだろう。
「リュウジさん、広場に小屋を建てて粥とスープを売っている店知っているよね?」
「ああ、俺の店だ。」
「昨日、買ってみた。粥もスープも少ないけど手頃な値段で、両方買って合わせてもいいくらいスープが濃かった。」
「うん、塩辛すぎたか?」
ロティは首を振った。
「きっとほとんどの人は、粥と混ぜて食べると思う。スープだけ買って薄めて飲んでもいいしあれでいいと思う。」
「そうか、ならよかった。」
ロティは何か言いたげに、少しもじもじとしている。
平気だとうそぶいているが、かなり怖かったのだろう。そして次の行商に出るのを躊躇している。それは感じ取れた。
「ロティさん、行商に出るにも中途半端になってしまったな。ロバは元気か?」
「うん、宿の馬小屋にいるよ。」
「うちのロバ小屋が出来上がっている。そこに小さいけど部屋も付けた。もしよかったら、ロバが出産して落ち着くまでうちに来ないか?」
「え?」
「寝るのは、うちの2階にスペースを作れる。いやならロバ小屋でもいい。それで、畑や屋台の手伝いをしてほしい。」
「リュウジさん、ありがとう。」
「いや、手伝いが欲しいからね。ヒロとシアンを呼ぶから挨拶をしてやってくれ。」
「うん。」
「ついでに小屋も見に行こうか。」
裏口から外へ出て水路脇に移した小屋を見せた。
「随分立派な小屋だね。それに藁も沢山入っている。」
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