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ホリイが外に出て、カウンターを開けるとざわざわと人が集まってきていた。
護衛の2人が、小屋の前に背の低い衝立のようなもので人ひとりの幅を作り始めた。
「粥とスープの販売をする。4番お玉でどちらも小銀貨1枚だ。入れ物を持ち一人ずつ並んだ者に売る。」
ギルド職員であることは一目瞭然の帽子をかぶっている護衛達が声を上げた。集まった人たちは彼らの誘導に従って並び始めた。一部文句を言うものもいたが、そういった者は列から出されてしまう。
貴重な食料とあって、人々は大人しく並んでいた。
今日は、ホリイがお金を受け取り、コエが粥、フーリィがスープを売ることにした。
フーリィがスープの蓋を開けてぎょっとした。それを見てコエとホリイも覗いた。
「これっ卵入っている!?」
「なんだって?」
「底からよく混ぜて売るようにって、リュウジさんからだよ。」
「わかっているよ。」
卵と聞いて、客たちも目の色が変わった。
カップがひとつしかない者は粥とスープの両方を一つの入れ物に入れるように希望した。
2つ持っている者は2杯ずつ購入するなど様々だったが、とにかく一人ずつ並んでもらっていなければ、対応できなかった。
あまりにも多い客に緊張したけれど、ギルド職員のおかげで無事に売り切ることが出来た。
全て売り切れると金入れをギルドへ運び、鍋を洗った。
「仕事終わりました。」
「はい、洗い物大丈夫ですね。お金も合っていました。それでは、今日もお疲れ様でした。こちら報酬です。」
「はい、ありがとうございます。」
ホリイは受け取った籠からスープと粥の入った大きい竹カップを1つずつ受け取った。
「これも卵のスープだよ。」
「えっ?本当に?」
「ああ、売った物と同じだ。」
「すごい!」
自分たちでも売っていたが、本当に卵のスープだった。それも売り物の2杯ずつ入っている。竹カップは大きい物で半分ほどしか入っていないのは、持ち運ぶ時にこぼさないためだ。
ホリイはカップの入った籠を抱えて家へ戻った。
子供2人は粥を食べられるようになってから、ベッドの上で起き上がれるまで回復していた。
「今日は、卵の入ったスープと粥があるからね。」
そう声をかけて、5歳の息子に粥とスープを交互に5口ずつ与えた。よほど美味しいらしく笑顔を見せてくれる。
2歳の娘にも同じように3口ずつ与えた。
2人とも満足そうに寝てしまったので、ホリイも残りを食べた。スープは少し濃いめの味つけで、なるほど粥と混ぜて食べるのが正解なのだろうと思った。
それから残りを混ぜて一口ずつ食べる。子供たちは満足そうな顔をしていた。
子供たちにとっては、生まれて初めての充実した食事だった。
その日から毎日、少しのタンパク質も食べられるようになり、体付きも戻っていくようになった。
やっと粥のみから脱却できました。
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