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「もう終わったかな?」
「リュウジさん、今日もあっという間に売り切れだよ。」
「ありがとう。少し3人と話しをしてもいいだろうか?」
「はい」
粥売りの3人が厨房に入るのを待って、隆二は声をかけた。
「実は、頼みがあって…3人の雇用条件を変えたい。」
「内容を…お聞きしても?」
「今は月・水・金の3日だが、月から金までの5日にしてほしい。その上で、売る物を粥とスープにしたい。」
「5日!?」
「スープ?」
「スープは、日替わりにするつもりだ。売るのはギルドのカウンターではなく、常設の屋台だ。」
「常設の屋台?」
「屋台の広場の端に小屋を建てる許可が出た。3人が並べる広さで、2人いれば店を開けるようにする。もちろん3人いるのが望ましいが、休みたい日もあるだろうから2人いればいいだろう。朝10時から13時まででギルドから護衛を雇うから安心していい。」
「なるほど。今と変わらないですね。」
「売り物は粥とスープだ。どちらも小銀貨1枚だが、お玉の大きさを半分近い90㏄にする。」
「少な目ですね。」
「その代わり、買いやすい。」
「そうですね。護衛というのは?」
「護衛は毎日2人つく。彼らが列を作らせるので、君たちは小屋の中で売り切って、鍋を洗うまでの仕事になる。どうだろうか?」
「その…報酬はどうなりますか?」
「報酬は、粥とスープだ。2人で仕事の時も3つずつ用意するから2人で分けるといい。それと1か月働いたら少しの謝礼もある。どうだろう?」
「やります!」
小屋が建つと、ギルドでの販売を辞め広場での販売のみにした。
小屋の中には、七輪のようなものを用意していた。もちろん隆二はそれで作っているわけではない。家で作った物を毎朝インベントリに入れて運ぶ。
それを彼女たちが売るのだ。少しの火をくべて冷めないように気は使えるようにする。
隆二は、金属加工の工房に回転釜を注文していた。仕掛けを説明すると驚いていたが、面白がって作ってくれた。回転釜は、食品工場や給食現場で使っている大鍋だが、違うのはガスや電気ではなく薪なところだ。そのために釜の下には薪を入れる炉がある。
そんな物を家の中におけるはずもなくロバ小屋の近くに小屋を建てて作っていた。
そこにはシンクや作業台なども設えていた。
上水道はないが、樽を架台に乗せてあるので、水道のように水は出てくるようにしていた。もちろん、大きい回転釜に入れるときにはインベントリから取り出す。
そうやって、一度に5日分の粥200Lは、米5袋を使って作れるようになった。
「本当に大丈夫かな?私、震えてきた。」
「私もだよ…」
コエたち3人は、小屋に来ると教わった通りに鍵を開けた、中には竈が左右に1つずつおかれていて、その上には鍋が1つ置かれ、その両サイドに鍋が1つずつ置かれていた。
カウンターの中央にはギルドの金入れが置かれている。
入ってすぐの場所に水の入った樽が、架台に乗せられていて、その下には水を集めて外に流す皿が置かれていた。
「これが手洗い場だね。」
「ああ、ここで石鹸をつけて手を洗うんだね。」
「石鹸なんて初めて使うよ。」
「すごいよ。いい香りそれに泡が立つ。これを水で流すんだね。」
水は板を足で踏むと出る仕掛けになっていた。
なんて便利な仕掛けなのかとコエ達は感心していた。
「火は残っているね。それじゃあカウンターを開けるよ。扉を押し上げて、横にある棒を端の穴に差し込むんだったね」
ホリイが外に出てカウンターを開けると、薄明るい小屋の中がまぶしいほど明るくなった。
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