13 アイテムリスト
隆二は、普通に飲める使える水を手に入れて安心すると気になっていたアプリを思い出した。
『アイテムリスト』だ。
アプリを開いてみると、見慣れた商品名が並んでいた。
宅配で届けていた商品で、転移前と変わらない。いや…少し文字が大きく表示されているかもしれない程度の差だ。
なんだ…何かできるのかもと期待したけど、そうなんでもできるはずがないか。
半年もたてば、懐かしいと思えるリストなのかもしれない。
そうがっかりすることではない。
アイテムボックスである『箱』と「インベントリ」があるだけでも十分なチートだ。
収納が出来る。簡単でも鑑定に近い能力がある。しかも温めて食べる電子レンジまである。
その上、7回まで完全回復する誠実まであるのだ。
これ以上は贅沢な望みだろう。
そう思いつつも、アイテムリストの商品を眺めてしまう。なぜか期間限定販売だった鰻弁当まで並んでいたのだ。今時期じゃないよな?
それに、やっぱり文字大きいよな…指を引き合わせるように動かすと文字が小さくなり、右側に数字が表示された。今まで見切れていたらしい。
鰻弁当(鹿児島産) 1,780MP
鰻弁当(鹿児島・宮崎産) 1,880MP
鰻弁当(国産) 2,190MP
ん?
MP?円じゃないの?
鰻弁当(鹿児島産)をタップする。
『鰻弁当(鹿児島産)1,780MPで交換しますか?』
「YES」
思わず「YES」を押してしまった。
すると、目の前に鰻弁当がポトンと落ちてきた。長細くて黒い弁当箱は、他の弁当とは一線を駕している高級仕様だ。
「おぉ…本物だ…」
冷凍弁当とアイスを食べてから1時間も経っていないというのに、目の前には鰻弁当だ。
「リリー、飲料フォルダから濃茶を出して」
『かしこまりにゃん♪どこに出すかにゃ?』
「右手に」
『かしこまりにゃん♪』
隆二は、飲料フォルダから濃茶を選んだ。
電子レンジスキルで鰻弁当を温めると蓋を開けると、添えられたタレのパックを開けて全体へかける。その上からパックの山椒を慎重にかけていく。
竹の割りばしを鰻のかば焼きに差し込む。柔らかい感触だが皮は抵抗する。一口大へ切り分けて、ごはんと共に口へ運んだ。
旨っ!
バイト生活になってからは、高級すぎて食べられずにいた鰻弁当だ。やっぱり甘辛いタレと山椒の風味と鰻の濃厚な美味さはたまらなく美味い!
小さな卵焼きと柴漬けは口直しにちょうど良い。
味わったつもりだが、勢いづいて食べてしまったような気もする。美味かったからいいか。
はぁ…久しぶりに美味かった。
満足した隆二はそのまま眠ってしまった。
目が覚めた隆二は、『評価』を開いた。
MPが回復していたはずだけど、つい鰻弁当なんて高額商品を購入してしまった。対価が日本円ではなくMPであるとしても、今交換する手段がMPしかないなら現金と変わらない。
名前 加藤 隆二
年齢 28(18)
性別 男
HP 1500/1500
MP 3170/5000
言語 異世界言語(聞く)、異世界言語(話す)、異世界言語(読む)、異世界言語(書く)
家族 ---
スキル マイスマホ、コンビニ(宅配・車・スマホ)、電子レンジ
称号 世界を渡りし者
「ああああ…そうなるよな。完全回復した後で良かった。いや、完全回復させる前に交換できたらよかったのに。」
トホホ・・・。
今更なことを隆二は後悔し始めていた。
だが、それもあまり持たず再び眠ってしまった。