表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/186

119



 隆二達は、畑は全ての面を耕し終えて、肥料の馴染みを待つために馴染むのを待っていた。

 1番の残り80aには大豆を植える予定だ。

 2番には、芋を植えたい。じゃがいもとさつまいもを日陰で放置していたが、芽が出始めていた。じゃがいもはもう少しで植えられるだろう。さつまいもはあと半月以上…1月はかかるかもしれない。さつまいもは芽が伸び弦になってからそれを切り取り根だしさせる必要があった。

 

 だが、隆二としてはそれよりも…柵を早く完成させたい。

 倉庫の一つは、家側の壁を3か所切り抜いて枠をつけてもらっていた。これは、ロバ小屋を作りに来た大工たちにやってもらったのだ。そこにはめる枠も作ってもらっている。

 枠にはレインコートの透明なビニールを張り付けることで、薄暗い倉庫に明かりを取り入れられるようになっていた。倉庫には元々窓はついているのだが、小さいうえにかなり上についていて空気の入れ替えにしか使えない。道路側に窓を設けると悪目立ちしそうなので、家側に設けたのだ。

 

 レインコートの透明シートは、透明ではあるけれどガラスのようにはいかないので、歪んで見えるし本当の透明ではない。それでも、明かりが入るだけでかなり違っていた。


 隆二は、朝起きるとアイテムリストから米1袋だけ交換すると、朝食も取らずに倉庫に向かった。

シアンが小窓を開けて水槽に漬けた柵をU字型のフックでひっかけて取り出し、外へ運んで倉庫の壁によりかけて乾かしていた。倉庫の壁沿いにはスノコを置いてあるので土がつくことはない。

 その間に、隆二はスライム液の追加を作る。倉庫には火がないので、温めるのは電子レンジスキルだ。それを加えて混ぜたころにシアンが漬けこむ柵を持ってくる。一度に漬けられるのは4つと少ないので、ここまでに出来上がったのは20本だけだった。

 残り60本を至急作りたい。そのためには、1日1~2回転で作業していたものを最大限3回転して1日12本5日で作りたかった。干場として倉庫の軒下だけでは足りないので、家の軒下も活用することになるだろう。

 漬け込むのに6時間、表面を乾かすのに2日、ある程度の強度が出るまでに1週間かかる。軒下で2日乾かした物は、倉庫に入れ壁に寄り掛からせて乾かしていた。

 

 

 


 「おなかすいたね。」

 「湯冷ましを飲もうか」



 ヒロはロロナを起こすと、湯冷ましの準備に台所にいた。台所の小窓から外を見るとリュウジが倉庫にいることに気が付いた。シアンも、倉庫の中から柵を運んでは軒下に並べていた。


 柵で畑を囲うと言っていたので、朽ちている柵が気になったのだろうと思っていた。

でも、今シアンが運び出している柵はとても背が高くて、目隠しにするつもりだとわかった。

 柵は竹で作られていて、竹職人たちが数日前に倉庫に大量に運び込んでいた。

 それをすぐに使わずにいるので、リュウジさんが何かしているのだろう。


 リュウジさんは、神様のような人だ。

 親を亡くして仕事のない僕に仕事をくれた。

 報酬の粥の他に仕事の前に甘いミルクティを与えてくれた。あのミルクティを飲むと信じられないくらい体中が満たされて体から力が沸いてきた。報酬の粥だって、持ち帰ってロロナに汁を飲ませると土色に近い肌色だったのに、自分と変わらない肌色にまでは戻っていた。

 残りの粥を食べれば、次の仕事までの2日間食べられなくても過ごすことができていた。それまで長い間、次はいつ食べ物を得られるかと思って過ごしていたのに、二回眠れば粥を得られるという安心感はものすごかった。



 それまで、イライラしたり不安だったり、ロロナを見ると余計にその感情が暴れてしまい自分でもつらかった。そういったことが減ったのだ。

 リュウジさんに泣きついて、ロロナの薬を買ってもらった。その薬を飲ませると粥の汁を飲ませた時と同じように良くなった。

薬の残りを飲んでみると、あのミルクティを飲んだ時に近い感覚があった。

 


 「ヒロ、あのミルクティは薬だ。砂糖という大変高価な薬がたっぷりと入っていた。」

「えっ、砂糖?」

「そうだ。お前が倒れそうだと思って用意してくれたのだと思う。あんな雇い主はそういないから、絶対に嫌われないように、正直に接しなさい。」



 そうお隣のヒイロに言われたのを思い出した。

 粥をもらえる仕事を紹介してくれたヒイロさんには感謝している。

仕事で知り合っただけの相手に薬を飲ませてくれたのだと、ロロナの薬を口にして理解できた。

 ロロナの薬は独特の臭さがあったけど、僕が飲んでいたのは甘くていい香りのする薬だった。




読んでくださりありがとうございます。


評価をいただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ