表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/187

118

今回は少し長めです。


 ロティが帰った翌日には、大工を呼んで小屋を建ててもらった。

 倉庫の前に立ててもらい、後で都合の良い場所へ移動させるつもりだ。裏の畑を他人に見られたくなかった。

 子供たちが、道路沿いの畑を耕しているのを見て、大工たちがなんとも言えない表情をしているのは、無駄な努力とか思っているのだろう。

 道路沿いの畑は野菜を植えていたというので、そこには倉庫にあった小麦の種を蒔いてもらう。その中央に妖精の泉近くで手に入れた小麦原種の種を縦に数粒だけ混ぜた。

 花粉が原因で実が付かないなら、原種が混ざることでなんとかなるかもしれないという期待からだった。


 これらが育つ前に、柵を巡らさないといけないと本能で思っていた。

 もう一つ、大事な仕事があった。子供たちが自分たちで厠あとを掘ることが出来るようにすることだった。自分がいなくなっても、掘るようにするためには、土を上にあげる道具が必要だ。

 残念なことにこの世界には、そういった工具はないようだった。車輪はあるのに滑車がない。

 そのため、滑車を作ることから開始した。

 滑車を作ってしまえば、土台は難しくない。三角に合わせた台2つの間に棒を通して固定するのが基本だ。その棒に滑車を取り付けられていれば、ロープは軽く引ける。もちろんロープを引く時に滑車を外れないような仕掛けは必要だけど、難しくはない。試行錯誤して作り上げると、大工たちが目の色を変えた。



 「おい、それをちょっと貸してくれ。」

 「いいけど、どうするんだ?」

 「これで木材を上げられたら楽だと思ってよ。」

 「ああ、それはいいですね。やってみてください。いや…待って、木材なら二か所止めたほうがいいかも…それなら、これをここにつけて…」



 隆二が手早く滑車を増やしロープも通した。

 大工たちは、ロープを掛けた木材を引き上げて歓声を上げた。

 


 「こりゃあいい。おい兄さんこれを売ってくれ!」

 「これ、作っていいか?」

 「ギルドに権利料の支払いを・・・」

 「もちろん支払う!どこのギルドだ?」

 「商業ギルドですが、俺の方から話しておくので明日以降にしてください。」

 「わかった。」



 隆二は急いで商業ギルドに出向き、滑車と荷揚げ機1号、2号、井戸の桶揚げ機の登録を行った。

 

 この特許の届け出は、大きな板に墨などの黒色で書きこむ。

機械の造りはもちろんだが、活用方法なども合わせて書くことで、有用性を宣伝できる。

高さを変えられるように、隆二はいろいろと幅を持たせた書き方にしていた。もちろん、そのためには使用する木材の太さなども書き入れていた。

 ここには、今後の特許料や条件なども記載できた。

 そして、この板を元に小さな板に書き写され、各ギルドへ知らせられるらしい。

 オリジナルは、所属ギルドに保管され、移された2枚目はギルド本部へ送られると聞いていた。登録料大銀貨1枚は決して安くないが、広まればプラスになるので惜しんではいられなかった。

 滑車の使い方は多いので、別に登録しておいた。

 後々、この3種で莫大な富を得ることになるが、この時の隆二は役に立つだろうからおこぼれをもらおうかくらいの気持ちだった。



 「リュウジさんは書くのも早いですね。」 

 「そうですか?」

 「はい、こんなに早いのは見たことがないです。そのペンも人前ではやめた方がよさそうです。」

 


 応接室で書くのに集中していた隆二は苦笑いをしてしまう。サインペンを使って書いているのは、インクをつけて書くペンでは時間がかかるからだ。高校生くらいの頃にあこがれて使ったことがあるが、一文書く都度にインクをつけないと書いている途中でインクが切れて不格好になってしまうのだ。

 しかも書く場所が板なのだから書きにくくて仕方がない。

 明日には大工たちが来るからさっさと登録したいのだ。

 


 

 翌日、大工たちは荷揚げ機と水揚げ機の制作権を得て、増産してかなりの売り上げを得ることになる。制作権は、各領地に1社ずつしか認めない。権利の使用条件は売値の3割を納めることだった。納められた3割は1割がギルド、2割が登録者の物になる。ギルドの1割から税も納められるので、登録者はそのままの金額を受け取れる仕組みになっていた。

 そして、ギルドは利益を守るために販売数のチェックは欠かさないらしい。

特許を使って作った物には、ギルドが特許印を押す。それがない物は違法物と言われて没収されても文句は言えないらしい。もちろん、押せる物と押せない物があるのだが、それはギルドと登録者の話合いになる。

 そのため、隆二が作った試作品にも特許印が押されていた。

 


読んでくださりありがとうございます。


評価をいただけると嬉しいです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ