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隆二達は、ヒロの家の畑を1番、裏の畑を2番、ヒイロの家の裏を3番と名付けた。
3番の畑は、隆二がスキルで耕し、森の泉の近くで採取した黍を蒔いた。これは手入れなしで収穫するつもりだった。
荒れ野でも育ちやすいので、手入れが出来なくてもなんとかなるだろう。子供3人と隆二では、手入れをできる気がしなかったのだ。
「リュウジさん、農地に引っ越したって女将さんに教えてもらったよ。」
「ロティさん!お帰り。長かったな…やっと帰ってきたか。」
唐突にギルドの厨房の裏口から顔を出したロティを隆二は歓迎した。
その様子を見て、女性陣達がほのぼのとした表情で見ていた。女性陣も3回目とあって仕事にも慣れてきたようだ。
隆二が鍋に分けると、すぐに仕事へ出て行った。
「ロティさん時間はある?」
「あるよ。」
「それなら、今からうちに行こう。そしてロバに頼みがある。」
「俺じゃなくてロバなの?」
「ロティさんもだよ。畑を耕す道具を作ったから、ロバで引いてもらいたい。」
「はぁ!?ロバは荷物を引く動物だよ?」
「わかっているよ。でも、今回だけ頼む。」
「もうっ仕方がないなぁ。リュウジさんはいつも唐突すぎるよ。」
「ごめんって」
ロティとともに家へ帰ると、ロロナが抱き着いてきた。
「えっと…いつの間に子持ちに…。」
「この子はロロナだ。ここはこの子の兄の家で、俺も間借りさせてもらっている。」
「へぇ…女じゃないのか…」
ヒロとシアンが駆け寄ってくるのを見て、ロティは大笑いした。
「なんだよっ」
「いや、リュウジさんらしい。女に頼られて騙されているのかと思ったら、子供たちっていうのがもう…放っておけなくて世話したのかな。」
「そんなことはない。」
「リュウジさんが僕と妹が倒れた時に看病に来てくれたので、そのまま甘えてうちに来てもらいました。ロティさんですね。リュウジさんが友人だと話してくれています。」
「なるほど、誤解していて少し恥ずかしいね。僕もリュウジさんに助けられたよ。だけど、大丈夫なの?」
「一応、ヒイロさんから許可出ていて、ヒイロさんの裏の土地も貸してくれている。」
「は?ヒイロさんってギルマスの?」
「ああ、そうだよ。名前で呼べってうるさくてさ。」
「そうだったのかって…これなに?」
ロティが畑を見て絶句していた。
最初の畑を作って2週間目、芽が4つ葉になっていた。
その前に作った一畳ほどの畑では蕪が膨らみ始め、トウモロコシも順調に育っている。
「芽が出てる!しかも、こんなに育っているなんて…」
「いけそうだろ?ここの奥だけまだ耕していないんだ。水も藁も十分にたべさせるから協力してくれ。」
「リュウジさんそれだとロバしか特をしていない。」
「ロティには夕食をふるまうに決まっているだろ?」
「昼飯も欲しい。」
「なるほど、食べていないのか。わかった。それなら、ロバも先に少し食べたほうがいいな。」
ロティにロバを繋ぐための杭を打ってやる。それから水路の近くに藁を取り出した。ロバはすぐにそれを食み始めた。
「それじゃあ、シチューとパンにしようか。」
隆二は作り置きのシチューを『箱』から取り出し、自分の分を抜いてから牛乳で薄めて皆に分ける。ロールパンも取り出し、ロロナにレタスをちぎってもらう。それにフレンチドレッシングを少々かけて混ぜた。
ロティがいるので、サラダ付きだ。
食事を始めると、ロティはがっついた。これは、あまり食べられなかったのかもしれない。
「リュウジさんのごはんは、やっぱり旨い。めちゃくちゃ旨い…」
「なんだよ。泣くなよ…」
ロティが泣き止んで食べ終えるのを少しだけ待っていた。
ロバの荷車とつなぐハーネスを使わせてもらい、耕作機を取り付けた。歯を設置すると、ロティに立て横に引いて歩くように頼んだ。横45m縦30mと川向うの縦10m2面を午後からの時間だけで耕してしまった。
子供たちはその様子をキラキラとした目で見ていた。
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