111
隆二がヒロの家に移り住んで1週間、1畳ほどの畑では順調に育っていた。
40aの畑では、芽が出てきているので育てることは問題なさそうだ。これなら、この家の区画は耕してみてもいいだろう。
隆二は、リビングのテーブルに着くとノートを取り出した。
大雑把に区画の図面を書き出す。
植える場所を決めれば、より計画的に進められるだろう。
今は5月だから…畑の使い方を考えないと食べるものの確保ができなくなってしまう。
隆二がここにきてから、じゃがいも、南瓜、さつまいもをできる限り購入していた。南瓜は種を取り、身は煮て食べるが食べきれないので『箱』へ収納していた。
さつまいもは日陰に置き、ツルが出るのを待つ。
じゃがいもは芽が出るのを待っていた。
「あまーい」
ロロナがご機嫌で食べているのは、茹でた南瓜にバターを乗せたものだ。
種が欲しいので、ここ数日は朝食に食べさせていた。素焼きも飽きてきたので、今日は少しの塩で茹でていた。
これだけでは不十分なので、牛乳も飲ませる。
「この黄色い芋、甘くて本当においしい…」
「南瓜だ。芋とは違うが…食感は似ているな…。」
「リュウジはおいしいものいっぱい」
「そうだね。リュウジさんは物知りだし、いろいろと教えてもらおうね。食べているだけはだめだよ。」
「だめぇ?」
「うん、お仕事をしないと生きていけないよ。食べるためには働かないとね。」
「わかった。ロロナもはたらく!」
ヒロとロロナの会話を聞いていた隆二が焦った。
病み上がりのロロナだ。ヒロもそうだが、無理はしてほしくない。木箱の洗浄の時だって、運び出しはシアンが行いヒロは洗う仕事を中心にしていた。まだ万全ではない。
「ロロナさんにはまだ早いよ。まだ治っていないから、もう少し休んでからだね。」
「ヒロさんも、治ったばかりだからね。重いものを持つのはまだ無理してほしくない。」
「リュウジさん、あのっすごく気になって…リュウジさんは立派な大人で一緒に住んでくれているし、僕たちのことは呼び捨てでいいです。」
「呼び捨て?」
「うん、他人行儀で落ち着かない…」
「俺も呼び捨てされたい。」
ヒロに続いてシアンも言い出した。
「それなら、俺のことも呼び捨てで」
「えっと…リュウジさんは大人だし…その…呼びにくい…」
「そんなことはない。」
「でも、父さん母さんだってさんつけるから、リュウジさんはリュウジさんで」
「ロロナは呼んでくれるんだがなぁ…」
「ん~?」
ロロナが見上げてにぱっと笑った。
「ロロナはかわいいな。」
頭を撫でると、抱き着いてくる。幼い子供らしい行動はかわいい。
従弟妹たちの幼い頃を思い出す。
「リュウジさん、僕も…その…」
ヒロが言いよどみながらも頭を出してくる。これは撫でてほしいのか?ヒロの頭をなでていると、シアンもじーと見てくる。
隆二は3人の頭を撫でた。
平穏だ。
平穏な日常を手に入れた。
同居人は子供ばかりだけど、自分を慕ってくれるのは悪くない。
「さあ、今日は畑を耕して、肥料を混ぜるぞ。」
「はーい」
「ロロナは、小さい畑のお世話をしてほしい。」
ロロナに1畳の畑の雑草抜きを教えてから、3人で畑づくりを始めた。
読んでくださりありがとうございます。
評価をいただけると嬉しいです。